プライベートの空間を共有しない完全分離型二世帯住宅は、ハウスメーカーの目玉商品として確固たる地位を築いています。人口減少と高齢化が進むうえに住宅の長寿命化が住宅着工件数減少に拍車をかける中、施工単価の高い完全分離型二世帯住宅はハウスメーカーにとってもドル箱です。
完全分離型は良いことずくめのように思えますが、ご両親が亡くなった後が問題です。例えば自分の子供たちの部屋に活用するとしても、食事のだけでなく、何か用事があるたびにいちいち外を回らなければならず、不便なことこの上ありません。
そんな不安にハウスメーカーの営業担当は、「賃貸として活用しましょう。節税にもなりますよ。」と、営業マニュアル通りに答えます。そんなにうまく節税できるのでしょうか?
小規模宅地等の課税価格の特例-ケース別解説
平成25年度の税制改正を受け、完全分離型の場合でも、建物を独立して区分登記していない限り、一緒に暮らしていた家族は同居親族と認められるようになりました。つまりは小規模宅地等の課税の特例を受けられるようになりました。
例えば、1階にご両親、2階に息子さん夫婦が暮らしていたケースで説明します。
この場合、2階部分は無条件に特定居住用宅地の適用を受けることができ、330平方メートルを限度に評価額の80%減額が認められます。
問題となるのは、1階部分の取扱いです。
息子さん夫婦が1階部分も住まいとして活用する場合
1階部分と同じく、特定居住用宅地の適用を受けることができます。
1階部分を賃貸に転用する場合
転用する場合は、原則として特例の適用は認められません。
例外として、申告期限(相続開始があったことを知った日の翌日から10か月)まで息子さん夫婦が住まいとして活用し、その後に賃貸に転用する場合は、80%減額が認められます。ただし課税当局は、ハウスメーカーが親居住部分の賃貸転用をうたい文句としていることを知っています。租税回避行為として否認されることも覚悟しましょう。