相続の遺産分割事件(家庭裁判所への調停申し立て)は平成8年に1万件を超え、以降も増加傾向を示し、平成27年には12600件に達しています。長期にわたる経済低迷も影響して、遺族側にも遺産を当てにすることが増えたと言われています。
一方で、相続税法では、期限内申告書の提出期限までに遺産分割協議が整っていることを要件として、適用を受けられる優遇措置がいくつかあります。
相続税の期限内申告書の提出期限(以下「申告期限」)
期限内申告書は、被相続人の死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に、納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
分割協議が整っているとは
相続人全員の署名・捺印がなされている遺産分割協議書の提出が条件です。被相続人の相続関係を証明する戸籍謄本(原戸籍を含む)、相続人全員の印鑑証明書も添付しなければなりません。
ただし、土地・建物の相続登記は条件とされていません。
適用を受けられない不動産関連の優遇規定
申告期限までに分割協議が整わなかった場合、以下の優遇措置は適用を受けることができません。
・農地の相続税の納税猶予
・相続税の物納
・相続税の延納
修正申告書を提出すれば適用が受けられる不動産関連の優遇規定
以下の優遇措置は、申告期限までに未分割の場合でも、申告期限後3年以内に分割協議が整い修正申告書を提出または更正の請求を行えば、適用を受けることができます。
・小規模宅地等の課税価格の計算の特例
・特定計画山林の課税価格の計算の特例
ただしこの規定の適用を受けようとする場合には、相続税の期限内申告書の提出時に、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しなければなりません。
分割見込書には、分割されていない理由、分割の見込の詳細、適用を受けようとする特例等を記載します。
申告期限後3年経過しても分割協議が整わない場合
遺産分割に関する係争が継続しているなど、やむを得ない事情がある場合に限り、3年を経過後2か月以内に承認申請すれば延長か認められるケースがあります。