不動産を譲渡した場合で一定の条件を満たすときは、相続税・贈与税・譲渡所得税など税制上の優遇措置を受けることができます。
こうした優遇措置を受けることで、課税額がゼロになるケースもあります。ただし、税金がかからなくても確定申告書を提出しなければ、適用が受けられない優遇措置が多いのです。
確定申告書の提出手続き
個人が不動産を譲渡した場合、不動産を譲渡して譲渡所得が生じた日の翌年2月1日から3月15日までの間に、所得税の確定申告書を提出しなければなりません。
特別控除
居住用不動産を譲渡した、土地・建物を公共工事や土地区画整理事業のために売ったなど、一定の条件に該当する場合には、特別控除として譲渡所得から一定の金額を差し引くことができます。この特別控除により譲渡所得がゼロとなるケースでも、確定申告書の提出が必要です。提出しなければ、特別控除の適用が無かったものとして追徴課税されるリスクを抱えます。
居住用不動産の譲渡損失の損益通算・繰越控除
住宅ローンの残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じローンの残債が残る場合、またはマイホームを買い換えた際に譲渡損失が生じる場合には、一定の金額を他の所得(事業所得や給与所得など)と損益通算できます。通算しきれないほど譲渡損失の額が大きければ、納付税額はゼロとなります。このケースでも、確定申告書を提出しなければ、損益通算がなかったものとみなされます。
それだけではありません。その年に損益通算しきれなかった譲渡損失の金額は、その年の翌年以降3年間にわたり繰越控除できますが、譲渡損失が生じた年分の確定申告書を提出しないと、繰越控除は一切認められません。ちなみに、その後の3年間も、連続しての提出を一度でも怠れば、繰越控除は打ち切られます。
何故確定申告書の提出が必要か
税務署は、納税者が特別控除や損益通算の要件に該当するかをチェックしなければなりません。そのために、たとえ課税額ゼロでも確定申告が必要なのです。