地価の長期低落傾向も手伝って、相続財産に占める土地のウエイトは確実に下がっています。それでも、相続財産の1位は依然として土地であり、構成比は4割を超えています。特に23区内の西南部など人気エリアに暮らしている場合、特に資産家でもない限り、持ち家が相続財産の大部分を占めるケースも多々考えられます。
相続は兄弟平等が原則
このような場合、相続税も気になりますが、それ以上に問題になるのが遺産分割です。持ち家を、今まで世話をしてくれた長男に相続させたいケースです。
兄弟が3人いる場合のそれぞれの法定相続分は1/3です。原則として、平等に分割しないといけないのです。
遺言でも全財産を相続させることはできない
「長男に全財産を相続します」との遺言を残したらどうでしょうか?こうした場合でも、他のご兄弟は法定相続分1/3の半分に相当する1/6を請求する権利があります。これを遺留分減殺請求と呼び、被相続人が亡くなられた日または遺言の存在を知った日から1年以内に行わなければなりません。通常は内容証明付き郵便で郵送します。
寄与分とは何か
「今まで年老いて車いす生活になった母を世話してきたのだから、私には寄与分が認められるはず」との主張をよく聞きます。ちなみに寄与分とは、被相続人の財産の増加に特別に寄与したかどうかを意味します。お母さんのお世話は立派な親孝行ですが、その結果、財産が増えるわけではありません。ヘルパー費用が浮いたではないか、との思いもあるでしょうが、子が親を世話するのは当然なすべきことであり、特別な寄与には当たりません。
土地を分割できない場合の代償分割
例えば土地の評価額が8000万円、その他の財産が1000万円の場合、兄弟3人の法定相続分は9000万円×1/3=3000万円、遺留分はその半分の1500万円です。長男が土地を相続する場合は、弟2人に500万円ずつ現金を分割しても、法定相続分には2500万円、遺留分にも1000万円足りません。
こうした場合、法定相続分まできっちり要求されるケースはまれですが、せめて遺留分は分割すべきでしょう。不足する分は生命保険金等に事前に加入して担保しておくのも一つの選択肢です。
それが難しいようなら、思い切って換価分割、つまり持ち家を処分して現金で分けることも考慮する必要があります。