周りは一面の住宅地、そんな中で農業を営む方は、宅地並み課税という言葉を聞いたことがあるでしょう。実際、そうした農家の方たちにとって相続税は悩みの種です。ここでは、相続税対策の一助となるよう、相続税法における市街化区域農地の財産評価、納税猶予や免除の規定を検証します。
相続税法上の農地の財産評価
相続税は、財産評価額に超過累進税率を適用して算定されます。ですので、財産評価額が課税額に大きな影響を及ぼします。
農地は相続税法によっていくつかに区分され、その区分ごとに財産評価が異なります。
市街地に所在する農地は、実際には宅地に近い価格で取り引きされるのが実情です。相続税法では、そうした農地には宅地並みの財産評価を適用することとしています。
市街地周辺農地
具体的には、都市計画法に定める市街化調整区域内の第三種農地が該当します。宅地に転用した場合の価格から造成費を控除した金額の80%相当額を財産評価額としています。
市街地農地
都市計画法に定める市街化区域内に所在する農地、および転用許可を受けた農地が該当します。宅地に転用した価格から造成費を控除した金額で評価します。
例外として、三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)の市街化区域内に所在する農地のうち、生産緑地としての指定を受けたものは、農地としての財産評価が適用されます。
ただし、生産緑地として一旦指定されたら、30年間は原則として指定解除することができません。
相続税の納税猶予
相続により市街化区域内の農地を取得した場合、宅地並みの相続税が課されてしまいます。ただし、相続人が申告期限までに遺産分割により農地を取得し、その後も営農を継続するなど、一定の要件を満たす場合には相続税の納税猶予が認められます。
然しながら、特定市街化区域内(三大都市圏の市街化区域)の農地に対しては、納税猶予が認められません。
相続税の免除
申告期限後20年間にわたり営農を続けた場合、または相続人が死亡した場合には納税猶予した相続税が免除されます。