地方を中心として、地価の長期下落傾向は依然として続いています。三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)でも、最近では持ち直しが見られる一方で、郊外エリアの多くが依然としてバブル前(1985年)の半分以下の水準にとどまっています。
そうした中で、不動産を売却して損失が生じるケースも多いでしょう。それでも所得税を納めなければならないことがあるのでしょうか?
原則として不動産の譲渡損失は他の所得と通算できない
所得税は、給与所得、退職所得、一時所得、譲渡所得など、10の区分別に所得の計算方法が定められています。
不動産の売却は譲渡所得に該当し、土地・建物の売却代金から取得費・譲渡費用を引いて計算します。この差し引いた金額がマイナスの場合を譲渡損失とよびます。
所得税は、区分ごとに計算した所得を合算し、累進税率を適用する総合課税を原則としています。例えば事業所得で損失が生じても、他の所得と通算して、損失分を控除できます。これを損益通算と呼びます。
ところが、土地・建物の譲渡所得は分離課税とされ、他の所得と損益通算できないのです。つまり、不動産の売却で1億円損しても、サラリーマンとして稼いでいたら税金を納めなければなりません。
マイホームの売却で譲渡損失が生じた場合の特例
ただし、マイホーム売却で生じた譲渡損失に対しては、損益通算が認められる場合があります。
マイホームを買い換えたケース
マイホーム売却で生じた譲渡損失を、給与所得・退職所得・事業所得など他の所得から控除することができます。その年分の所得で控除しきれなかった金額が残るときは、その翌年以降3年間に繰り越して控除することもできます。
マイホームを買い換えなかったケース
住宅ローンの残債を下回る価額でマイホームを売却して譲渡損失が生じた場合には、新しいマイホームを買い換えなかったケースでも、ローン残債から売却金額を差し引いた金額を限度として、損益通算および繰越控除の適用を受けることができます。