アパート、賃貸マンション(以下「アパート等」)経営がブームで盛り上がっています。テレビでも、「サラリーマンでもアパート経営ができる」といった有名俳優を使った広告が頻繁に流れています。
増え続ける着工件数
国土交通省の新設住宅着工統計によると2015年度の住宅建設は92万戸と前年比105%の高い伸びを示しています。2016年度も11月までの累計では前年比107%であり、このままいけば2年連続増加は確実です。
機関車役はアパート等で、着工件数は2015年度38万戸で前年比107%、2016年度は40万戸越えは確実です。
アパートブームは三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)だけではなく、地方に飛び火しています。東京都の6万件は別格としても、北海道2万件、宮城県1万件、福岡2万件と、地方の中核自治体が気を吐いています。
相続税課税強化が火付け役
そもそも少し前までアパート等投資は、セミプロが地方のオンボロアパートに目をつけ、低家賃で、15-20%前後の高い利回りを上げる、といった手法がひそかに流行っていた程度で、一般的には低調でした。
流れが大きく変わったのが、相続税の強化です。税制改正により2015年度より基礎控除額が6割に引き下げられました。
節税対策の一環として、多くの資産家がアパート経営に走ったのです。アパート等の敷地に供される宅地の評価額は、
自用地の評価額×(1-借家権割合×借地権割合×賃貸割合※)
※どれだけ部屋が埋まっているかの割合で、満室なら1となります。
で計算され、賃貸割合が1とすると、地域にもよりますが、自用地評価額の8割程度まで圧縮できます。
さらに、事業継承などの要件を満たせば、200㎡までを限度面積として、50%の評価減の適用を受けることができるのです。
金融機関も投資を後押し
さらに、金融機関の融資攻勢が、アパート投資に拍車をかけています。最近流行のアパート経営仲介会社のバックには、銀行が付いているケースも多いのです。
日銀の貸出先別貸出金統計によると、個人の貸家業への融資残高は35万件、22兆円にも達しています。
予断を許さない今後の需給状況
これだけアパート等が林立すると、過剰供給が心配です。調査会社タス調べによると、三大都市圏の過去2年空室率TVI(タス空室率インデックス)推移は顕著な悪化を示したわけではありませんが、今後の動向に注意が必要です。