大概の人は、近所に暴力団事務所がある物件は敬遠するでしょう。そういう物件を売却する場合は、そのことを買主に告知する義務があります。でも、売主がその存在を知らなければ、告知しようがありませんよね。
暴対法が施行されて以降、外見では暴力団事務所とは分からないように偽装しているケースが少なくありません。なので、売主がその存在に気付かないで売却するケースもあるわけです。
では、売買契約が成立して引渡し後に買主が暴力団事務所の存在に気付いた場合、売主の責任はどうなるのでしょう?
暴力団事務所の存在は瑕疵担保責任の対象になる
民法の規定で、売主は瑕疵担保責任を負うことが義務付けられています。瑕疵担保責任とは、隠れた瑕疵(欠陥)に対する売主が負う責任のことです。対象になるのは雨漏りなどの構造的欠陥だけではなく、心理的な瑕疵も含まれます。
過去の判例では、暴力団事務所は一般人の平穏な生活を脅かす存在になると判断されています。なので、暴力団事務所の存在は瑕疵担保責任の対象になるわけです。仮に売主が暴力団事務所の存在を知らなかったとしても、損害賠償を請求される可能性があります。
ただし、売買契約書に瑕疵担保責任の免除する旨の条項があれば、賠償責任を免れることができます。でもそれは、あくまでも売主が知らなかった事が前提なのです。もし知っているのに隠していたら、免責条項は無効になります。
故意に隠していなくても責任を問われることがある
売主が本当に知らなかったのか、それとも隠していたのかを証明するのは難しいですよね。だったら、本当は知っていても「知らなかった」と主張すれば良いかというと、そういうわけではありません。
まず前提になるのは、「通常の注意義務」です。裁判所が通所の注意をしていれば気付く事と判断すれば、賠償責任が生じる可能性があります。その場合、契約解除ではなく売却価格を何割か減額するという例が多いようです。
たとえば、「○○組事務所」といった暴力団と分かる表示がなくても、明らかにその筋の人間と分かるような人物が頻繁に出入りしている。近所の人も、それを認識しているといった場合は、知らないでは通らないですね。
そもそも、誰一人として暴力団事務所と気付かないのであれば買主にも分からないし、平穏な生活を脅かされる心配もしないでしょう。なので、買主が気付くのであれば、当然売主も知っていたと疑われても仕方ないですね。