今風にリノベーションして売りに出したけど、何故か、なかなか買手が付かない。その原因で意外と多いのが、入居者ニーズを無視したリノベーションなのです。
入居者ニーズを無視してリノベーションした結果
住居を選ぶ際、ライフスタイルや家族構成によって重視する点が異なります。これは至極当たり前のことなのですが、売ることにとらわれ過ぎると、この「当たり前のこと」を忘れがちになるのです。
Aさんは夫婦と子供2人の4人家族、川崎市内にある築25年で65㎡3DKのマンションに住んでいました。子供たちが成長して手狭になったこともあって、郊外にある実家を2世帯住宅にしたのを機にマンションを売却することにしました。
Aさんのマンションは最寄り駅から徒歩10分圏内で買い物の便も良く、すぐ近くには公園もありました。売却に際して差別化を図るために、デザイン性や機能性に配慮して開放感のある1LDKにリノベーションしたのです。
そういう物件なら、すぐ売れそうな気がしますよね。でも内覧はあるものの、なかなか契約には至らなかったのです。
Aさんの物件は、どうして買手が付かないのか
最寄り駅から物件までの道中には昭和の雰囲気が漂う活気のある商店街があり、どのお店も値段はリーズナブル。しかし午後8時を過ぎると、殆どのお店が閉まってしまうのです。飲食店はあるものの午後10時には閉店し、遅くまで開いているのは居酒屋が2件だけ。
問題なのは、1LDKという間取りです。どう考えても、ファミリー層向きではありませんよね。お洒落な1LDKなら、ターゲットは裕福なシングルかDINKSでしょう。
案の定、内覧希望者は30代後半のシングルかDINKSばかりで、ファミリーはいませんでした。シングルやDINKSにとっては、遅い時間に買い物ができないとか、お洒落な飲食店がないというのは魅力に欠けます。
近くの公園は遊具が多い児童公園で、ファミリーには嬉しいけどシングルやDINKSにとっては煩いだけで迷惑でしかありません。休みの日に子供の声が響き渡る公園が近くにあるのはマイナス要素になるのです。
Aさん家族には住み心地の良い環境だったので、今風のリノベーションをすれば直ぐに売れると思っていたようです。しかし、業者から売りやすくなるからと勧められて、何も考えずにお任せで1LDKにリノベーションしたのが返って仇になったわけです。
Aさんは今更ながら、お金をかけて売れない物件にしてしまったことを後悔しています。リノベーションして売却する際は、入居者ニーズを考慮しないと痛い目に遭うという典型的な例ですね。