田舎にある実家を相続して売却しようとしたら、「十数人の共同所有形態になっていた」なんてことがあります。その場合、売却するには十数人全ての同意必要。さて、そんな家の運命や如何に。
共同所有者が増える理由
代々続いた古い家は、代が変わる度に相続が繰り返されます。その際、きちんと相続登記がなされていれば問題ないのですが、これをしないで放置すると相続権を持った人がネズミ算式に増えていくのです。
たとえば、単独所有者であったAさんが奥さんと3人の子供を残して死亡したとしましょう。その場合、法定相続であれば奥さんが半分、残りの半分を3人の子供で分けることになります。
まずはこの時点で、4人の共同所有ということになりますね。そして、誰か一人の名義で相続登記をしないまま奥さんと3人の子供が死亡し、それぞれに2人の子供がいれば6人の共同所有になります。
更に相続した6人の内4人が死亡して、死亡した4人の子供が計10人いたとすると、生存している2人に10人が加わって共同所有者が12人になるというわけです。
相続登記を疎かにすると売るに売れない事態に
由緒ある家柄とか資産価値のある不動産であれば、相続が発生した時点で相続権を持った人たちの間で分割協議が行われて相続登記がなされるでしょう。
しかし田舎の古くて資産価値の低い民家は、相続登記をしないまま放置されることも実は珍しくないのです。
高齢化社会になった今、相続する側が既に高齢になっていることも少なくありません。なので、相続後に時をおかず新たな相続が発生し、相続登記がなされないまま共同所有者が増えていくということもあるわけです。
実家から離れて東京や大阪で生活していると、親戚とも疎遠になりがちです。もし十数人の共同所有者がいたら、中には連絡がつかない人もいるでしょう。そういう状況だと、分割協議をするにしても大変な作業になります。
そうなると、売却したくても売るに売れない事態になります。大した金額にならないような不動産であれば、面倒なので放置するケースも少なくありません。そして、処分されないまま放置されて空き家になってしまうわけです。
空き家対策特措法に基づいて、市町村が「特定空き家」と判断すると所有者や管理者に解体を勧告することができます。しかし所有者が十数人いるようなケースでは、手続きが煩雑になってなかなか進まないでしょう。
空き家が増え続ける背景には、こういった事情もあるのです。実に悩ましい問題ですね。