不動産を所有している人なら、日本が直面している人口減少、少子高齢化問題が不動産の資産価値にどんな影響を及ぼすか気になるところでしょう。そこで今回は、長期的な視点で人口減少、少子高齢化が不動産に及ぼす影響について考えてみましょう。
持ち家率と持ち家志向
単純に考えると、人口が減少すればそれに伴って住宅需要が減って不動産市場のパイが小さくなるような気がしますよね。確かに市場全体では、将来的にそういったトレンドになるでしょう。
しかし、平成25年に発表された総務省の調査データによると、持ち家率は全国平均で約60%程度。持ち家率が最も高いのは富山県の79%で、東北の日本海側と北陸の持ち家率が70%台後半と高い傾向があります。
最も持ち家率が低いのが東京都で46%、大阪腑は54%と大都市の持ち家率は50%前後でした。一方で、住宅の所有に関する意識調査では、概ね80%の人が持ち家願望を持っているという結果が出ています。
20代後半の持ち家率は10%強で、30代でも40%を切っています。そして、その人達の80%に持ち家思考があるわけです。この数字を見る限り、潜在的な住宅重要は底堅いと考えられます。
投機的な視点ではなく実需で考える
持ち家思考が80%を超えてはいるものの、一次取得のメイン層である30代から40代の持ち家思考が減少傾向にあります。持ち家に対する価値観の変化もあるでしょうが、最も大きな要因は都市部を中心にした不動産価格の上昇でしょう。
特に東京区部の住宅価格は、80年代のバブル期に近い価格に上昇しました。価格上昇に見合うだけの収入増があれば別ですが、現実はそういう状況ではありません。それでは、いくら買いたくても手が届きませんからね。
しかし、東京都区部を中心にしたマンションブームによる価格高騰は天井を打ち、今は調整期に入って来ています。おそらく、2020年の東京五輪に向けて徐々に住宅価格が下落していくでしょう。
既にその徴候は現れていて、都心や湾岸エリアのタワーマンションでも売れ残りが出ている状態です。東京郊外では、都区部以上に新築物件の在庫が増えているようです。それに伴い、中古住宅の価格も下落傾向にあります。
こういった現象を短期的に見ると、先行きが不安になるかもしれません。しかし見方を変えれば、住宅市場が正常な状態に戻りつつあるということです。一次取得層が購入できる価格帯になれば、まだまだ需要は見込めます。
バブル崩壊以降、不動産を持っていれば価格が上がるという、かつての「土地神話」は有名無実になりました。もちろん、購入時より価格が上がる不動産もあるでしょう。しかし、キャピタルゲインを期待できる物件は、そう多くはありません。
短期の投機的な値動きに目を奪われるのではなく、長期的な視点で実需の動向を注視することが肝要です。