全国には「空き家」が820万戸もあり、深刻な社会問題になっていることをご存じの方は多いと思います。その解決策の一つとして「空き家バンク制度」を取り入れている自治体が徐々に増えています。
空き家バンク制度とは
これは「空き家」を有効活用するための取り組みで、主に市町村などの自治体が運営しています。運営方法や細かな仕組は自治体によって異なりますが、要は空き家の所有者と利用希望者をマッチングさせる制度です。
自治体の目的は、地元の空き家を活用することでI・Uターン者の移住を促進すること。人口減に悩む地方自治体にとって、空き家問題の解消と外部からの移住による人口増で地域の活性化が期待できる制度なのです。
ところが、利用率が低く今ひとつ活用しきれていないのが実情なのです!
何故、利用率が低いのか?
今回は、その主な理由と「空き家バンク」を活用するための課題についてお話します。
※自治体以外が運営するケースもありますが、ここでは自治体が運営する「空き家バンク」に限定しています。
空き家バンクを扱う不動産会社の本音
自治体が運営するのでから、営利目的ではありません。基本的に所有者と利用希望者をマッチングさせた後、自治体は契約には介入しません。なので、売買・賃貸何れにしろ、契約は宅建業者(不動産会社)が仲介することになります。
マッチング後は通常の不動産契約と同じなので、仲介手数料が発生します。しかし仲介手数料は物件価格に応じて決まるので、不動産会社は手数料収入の安い物件にはあまり積極的ではないのです。
そもそも、地方都市で空き家のまま放置されている物件は低価格ですからね。ましてや田舎の空き家なら尚のことです。仲介業者も商売ですから、同じ手間なら実入りの良い方に積極的になるのは致し方ありません。
自治体の実情
殆どの自治体では「空き家バンク」の専任などおらず、他の業務と兼任というのが実態です。どこの自治体も財政難で豊富な予算があるわけもなく、空き家の募集や登録、利用希望者へのホームページでの広報などは限界があります。
空き家活用に際して様々な助成制度がありますが、自治体によって内容や規模はマチマチです。周知方法は各自治体のホームページや官報くらいしかないので認知度は低く、如何に多くの人に情報を拡散していくが今後の課題です。
一般社団法人移住・交流推進機構が平成26年1月に行ったアンケート調査によると、回答があった1,158市町村の内、62.9%の自治体が「空き家バンク」を実施しているそうです。しかし、空き家の登録件数が20件未満の自治体が80%で、活用状況は決して良いとは言えません。
「空き家バンク」を活用するための課題
何事もそうですが、中途半端な取り組みで成功した例はまずありません。ですので、「空き家バンク」の利用率を向上させるためには、本腰を入れて取り組む必要があります。
そのためには、専門部署を設けて不動産・建築関連の業者との協力体制を構築することが必須です。ホームページや官報だけではなく、今流行のSNSの活用も検討すべきでしょう。それに加えて、地域住民との緊密な連携も重要な課題になります。
国も空き家問題は重視しているようで、「空き家バンク」利便性を向上させるために動き出しました。
これまでは自治体ごとにシステムが違うため、今ひとつ利便性に欠けていましたが、国交省が「空き家バンク」のシステムを一元化した全国版をスタートさせるようです。
具体的にどのようなシステムになるのか今のところ定かではありませんが、手軽に全国の空き家情報を入手できるようになれば良いですね。今後は各自治体が国と連携しながら、地域の事情や特性を考慮して独自の施策を練り上げることが課題になるでしょう。