近隣に高層物が建つ予定があることが分かっているマンションを売却する場合、買主にそのことを事前に通知すべきか否か悩ましいところです。物件からの眺望が悪くなれば、買主に値切られる心配がありますからね。
景色が変わることを知っているのに通知しないのは売主側の都合ですが、買主にとってそれは不都合な事実です。では、眺望が変わることを買主に事前通知すべきかどうか、法的な観点で検証してみましょう。
眺望権と日照権
眺望権という概念があるのですが、これは法律で守られた権利ではなく裁判になっても認められるケースは多くありません。似たような権利に日照権があり、眺望権に比べて認められる可能性は高くなります。
その違いの理由は、日照権が快適な生活に不可欠な利益であるのに対し、眺望権は個人にとってそこまで重要な利益ではないという考え方があるからです。
眺望に関する説明義務
売主が近隣に高層物の計画があることを知らなければ別ですが、それが眺望を阻害することを事前に知っている場合は通知義務があると思われます。
不動産の売買時に眺望が変わることを説明していない場合は、売主側の説明義務違反として責任を追求される可能性があります。事実、説明義務違反があったとして裁判に持ち込まれたケースは少なくないのです。
証拠があれば責任追及ができる
買主が売主側の説明義務違反を追求する場合、売主が眺望を阻害する要因があると知ったうえで販売したことを証明する必要があります。
売主が不動産販売業者で眺望が阻害される要因があることを知っており、それを隠して眺望を強調して販売した場合は責任追及される可能性があります。ただし、そういった事実をメールやパンフレット、録音などで客観的に立証できることがポイントになります。
道義的な責任はある
不動産販売業者と違って個人の場合は、眺望を阻害する要因を事前に知っていたことを証明することは難しいのが現実でしょう。しかし、法的な責任追及を逃れられたとしても、道義的な責任は残ります。
裁判に発展することはないとしても、買主とトラブルになる可能性はあります。買主は購入したマンションに住み続けるのですから、それを考慮して景色が変わる可能性があることを伝えておくべきでしょう。