みなさんは、住宅地の中に家の周りを鉄骨とネットで覆っている家を見かけたことはありませんか?
これ、住宅の『塗装』のための足場なんですよね。
色々と出費がかさむ中で「わざわざ家の色を塗りなおす必要なんてないんじゃない?」と思うかもしれませんが、実は住宅の塗装は非常に重要。
単にお色直しだと思うなかれ、住宅の塗装は不動産を売却する際にも非常に重要なポイントなのです。
今回は「塗装屋さんが教える売却前のコツ」を紹介しましょう。
塗装屋さんってなに?
まずは基本的なことからお話ししましょう。
建築業界には『塗装屋』という業態が存在します。
塗装屋とは、読んで字のごとく、塗装をする職人さんのことです。
俗に『ペンキ屋』などと呼ばれますが、住宅塗装の職人とペンキ屋は全くの別物です。
試しに、住宅塗装の職人さんに「ペンキ屋さーん」と呼びかけてみましょう。
たぶん「ペンキ屋と一緒にするな!」と怒られてしまいます(笑)
この業界でいう『ペンキ屋』とは、鉄骨や橋梁などの塗装をする職人さんのことを指す言葉で、機微のわかる塗装技術がウリの住宅塗装の職人さんとは一線を画した存在なのです。
と、こんなことを語っている筆者ですが、実はわたくし、住宅塗装の経験者です。
基本的には親方と私の2人だけの会社でしたが、親方が塗装に対する強いこだわりを持ち、材料にもこだわり技術に妥協をしない方だったので、出来映えは近所の住宅と比べても段違いの輝きでしたね。
塗装屋といえば、基本は「屋根と外壁を塗る」という作業ですが、住宅の塗装には軒下の天井、小庇(こびさし)、出窓、雨どいなど、細かい技術が必要な箇所がいくつかあり、案外と「ガテン系」の作業ではありません。
どちらかと言えば、家具職人などと同じ目線で見ても良いだろうと思います。
売却予定の住宅を塗装?それって意味があるの?
さて、今回の本題です。
現在、売却予定の住宅がある方は、ぜひ売却前に住宅の塗装をしてください!
はい、あちらこちらから「売る前の家を塗装してどうするんだ?!」という声が聞こえてきますね。
私も塗装業に就く前にはそう思っていました。
これから長く住み続けるからこそピカピカに塗りなおすんだろ?と。
でも、実際は違います。
私が実際に親方と塗装してきた住宅のほとんどは、その時点で人が住んでいない住宅、つまり『空き家』でした。
これは、親方が付き合いを持っていた不動産屋さんが「中古住宅を買い取ってリフォームして販売する業者だったから」です。
内部の大規模のリフォームはもちろんですが、特に屋根や外壁を塗装しなおした住宅はまるで新築のような輝きになります。
もちろん、中古住宅をそのまま販売するよりもずっと高い金額で売れるので、不動産屋さんにしても有益な投資になるわけです。
こう考えると、売却前の住宅を塗装することの意味も見えてきますね。
そうです、ストレートに「買取額がアップする」ことにつながるのです。
売却前の住宅を塗装してプラス100万円を実現したAさんの実例
ここで、私が実際に担当したAさんのお宅を紹介しましょう。
Aさんは、売却予定だった住宅を塗装しなおすことで、最終的なキャッシュのプラス100万円を実現しました。
Aさんの物件は、1970年代に造成された古い住宅団地の一角にある築35年の一戸建て住宅。
もともとはAさんのご両親が住んでいた、つまりAさんの実家で、ご両親が亡くなってAさんが相続した物件でした。
既にマイホームを購入していたAさんは、相続はしたものの住む予定もなかったので売却しようと考え、不動産屋さん数社に相談しました。
査定額は土地建物込みで700万円から800万円。
「もう少し高く売れないかなぁ…」と考えたAさんは、知人に「キレイに塗装してもう一度査定してもらえば?」とアドバイスを受け、私たちに依頼が舞い込むことになりました。
実際のAさんの物件は、外壁にひび割れがあったり、雨どいが割れていたりで、そのままだと「古い家だなぁ…」という感触が否めない状態でした。
塗装屋のスゴイところは、少々の補修工事はやってしまうところです。
親方によると、今から30年くらい前までは塗装の専門業者というものは存在せず「屋根と外壁の何でも屋」だったそうですから、ちょっとした左官作業や雨どいの付け替えなどは塗装の下準備としてやってしまうので、朝めし前なんですよ。
もちろん、下準備程度なので材料費をもらうだけで別の工賃なんてもらう塗装屋はほとんどいません。
塗装の見積額は約100万円。
これは外部に依頼する足場の代金、塗装の材料費、作業日数約10日×人件費、会社としての取り分(ここが少ないのが個人の塗装屋です)で合計100万円です。
予定どおりに塗装工事が終了し、新品のように見違えて美しくなったAさんの物件。
早速、再度不動産屋さんに買取の相談をしたAさんから喜びの連絡が入りました。
数社の査定で買取額は約1,000万円。
塗装前の査定額と比較すると200万円のアップですから、塗装費用を差し引いても100万円のキャッシュがより多く手に入りました。
このように、売却前に塗装工事をしておくことで売却額は確実にアップします。
Aさんの物件は、不動産屋さんに売却したあと、1か月も経たない間に次の買い手がついて人が住み始めました。
Aさんから物件を買い取った不動産屋さんの立場でも「塗装をやり直してくれているから、メンテナンスさえ入ればすぐに売りに出せる!」という強みがあったわけですね。
塗装費用を安くするコツ
ここで、少しでも多くのキャッシュを手元に残すためのコツをひとつだけ紹介しましょう。
塗装屋に空き家の塗装工事を依頼するのは「6月がベスト」です!
「空き家の塗装をするのに、季節なんか関係あるの?」と思うかもしれませんが、こと塗装屋に関しては大アリです。
6月といえば梅雨時期。
雨が降ったりやんだりを繰り返す季節です。
屋根や外壁に関するお仕事の塗装屋は雨が降ると作業ができないことが多いので、人が住んでいる住宅では長い間ジャマな足場が建っていることになり、工期が気になります。
しかし、空き家となれば足場が建っている期間を気にする必要はありません。
「天気が良い日を選んで作業をすればいい」という好条件は、基本的には塗装屋が工事を避ける6月においてはありがたいお仕事なのです。
工期を気にしない工事であれば、ほかの工事を入れていない6月の塗装屋は10万円程度は値引きをしてくれます。
塗装工事の規模によっては、交渉次第でもっと値引きができる可能性もあるので、数社からの相見積もりをとって、工事の内容や価格を比較してみるとよいでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
何度も言うようですが、売却予定の住宅がある方は、ぜひ塗装のやり直しをオススメします。
元々の住宅の状態にもよりますが、塗装工事をしておくだけでも住宅は新品のように美しくなり、売却額の大幅なアップが見込めます。
ただし、大幅な修繕が必要になると大工さんなどに工事を依頼する必要が生じるため、売却後のキャッシュが目減りしてしまうこともあるので注意が必要です。
大切なのは
・塗装のやり直しによって見込める売却額のアップ分と塗装費用のバランス
・塗装屋の相見積もり
・複数の不動産屋に査定をしてもらう
という点ですね。
住宅の塗装は「家のお化粧」だと言われています。
ぜひ売却前の塗装で、大切な物件を美しくメイクアップして、高く売却しましょう。