意思判断能力がないまたは欠如している方が療養看護や老人ホームに入るために、
不動産を処分(売却)しなければならない場合に、成年後見人が被成年後見人の所有不動産を売却する場面はよくあります。
そして,売却する予定の不動産が,被成年後見人の居住用不動産である場合には,家庭裁判所の売却許可が必要であり,この許可を得ないで売買契約をしても無効になっていしまいます。
この場合の不動産取引(売却換価)において注意が必要なことがいくつかあります。
というのも、通常の売買と違って、その土地に住んでいた経験のない方(後見人)が登記の名義人(売主)に代わって売却をする特殊性から以下の事が発生します。
①嫌悪事項や告知事項を(後見人が)知らない。
つまり、『いつここでまたは周辺で何があった』ということを、登記名義人本人であれば
知っているかもしれない事項を、後見人さんは知らないまま売買をする。
②隣接地との境界の立ち会い確認などが無い状態での売買をせざるを得ない。
つまり、この土地境目は『ここまでだね』『そうだね』と確認できない状態。
後見人さんはどこまでがこの土地なのか、厳密には理解しないままで売却せざるを得ない。
すると、買い受けた側で、後日境界確認をすると思っていたことと相違する可能性がある。
ちなみに、隣接地の方と意見が相違し、不調になってしまうと境界確認印をもらえないことに
なり、土地の分筆(土地を分けること)ができなくなり、分譲業者さんなどは困ってしまいます。
③通行掘削承諾が取れないまま売買せざるを得ない。
最近の取引慣行では、前面道路が私道の場合には『通行掘削承諾』を取得してから売買をする
ことが多いです。全面の道路持ち分をもっていようとそうでなかろうと、他の道路地権者から
あとになって、勝手に道路を掘るな!とか車の通行は許さないなどと言われると困ってしまいま
す。しかし、何年も住んでいた登記名義人さんの働きかけがないと、取れる承諾も取れなくなる
ことがあります。
成年後見や破産管財のケースでは
売買したあとにお互いに厭な思いをしないように注意と覚悟が必要です。
後見人さんに依頼される不動産専門家としてはより注意深く立ちふるまう必要があります。
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鈴木豪一郎
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