■LGBT不動産の社中日誌
LGBTのライフプランニング・サポートを手がけ、自身もゲイであるIRIS須藤あきひろ代表に、不動産や住宅の現場で感じる問題点を紹介いただきます。(リビンマガジンBiz編集部)
皆さんは、自分の老後、死後について考えたことはありますか?
真剣に考えたことがある人は少ないと思います。特に若い方は尚更です。私もそうでした。しかし、私はある出来事をきっかけに「人間はいつ死ぬか分からない」と思うようになりました。
それは、昨年の6月に起こりました。
その日、私はパートナーの家で映画を観ていました。翌日は休みです。夜中の2時過ぎに、知らない番号から何回も着信があったので、出てみると警察からでした。
当時、私は友人とルームシェアをしていました。その友人が事故で緊急搬送されたと言うのです。
幸い一命は取り留めましたが、病院で傷だらけになった友人を見て、「本当に死んでしまうのではないか」と、恐ろしくなりました。警察の方によると、友人の携帯電話に残された最終通話履歴が私だったため、連絡をしたとのことでした。もし連絡がなかったら、私は友人が事故にあった事実すら知らなかったと思います。
この出来事をキッカケに、私の考えが変わりました。
人はいつ何時、どうなるか分からない、ということです。
LGBTsは、カミングアウトをせずに生活している人がほとんどです。また、自身の個人情報をたとえ仲の良い人にも明かさない方もたくさんいらっしゃいます。お会いする同性カップルの中でも、数十年も人生を共に歩んできたけれど、パートナーの個人情報を全く知らないという方もいました。
しかし、信頼できる相手や、パートナーには「もしも」の時のためにも、個人情報を伝えておくことが必要かもしれません。
(画像=写真AC)
個人情報ってどんなこと?
・勤務先、友人、両親の連絡先
・資産状況(保険、株式や投資信託等の運用商品、土地など)
・疾病、障害など体に関すること
自分の大事な個人情報は、安易に教えるものではないと思います。しかし、パートナーや家族には、お互いを守るという意味でも重要なことはきちんと共有しておいた方が良いと思います。
LGBTsカップルが個人情報を知らないと、どんなリスクが発生するのか
①葬儀に参加できない
別々に生活をしていて、パートナーと連絡が取れなくなり、亡くなってしまった事実すら知りようがなかった、という方にお会いしたことがあります。パートナーの実家住所を知らされていなかったため、お葬式にも参列できなかったということを公開していらっしゃいました。
②資産を相続できないかもしれない
同性パートナーは法的相続権がありません。そのため、「公正証書」等を利用して遺言を残しておかないとパートナーに財産を残すことができません。公正証書の作成には5~10万円ほど費用が発生します。仕組みを理解するのは大変だと感じる方も多いと思いますが、残されたパートナーのことを考えると、準備は必要だと思います。そのためにも個人情報をお互いに共有する必要があるのです。
③同居する住宅の名義がパートナーだった場合、住む場所を失ってしまう
ストレート(異性愛者)の方で結婚をしている方は、住宅の名義人が亡くなった場合でも、家族が賃借権を相続することができます。しかし、同性カップルの場合は権利まで相続できません。そういったトラブルにならないように、二人の名義でお部屋を借りるか公正証書遺言等でリスクヘッジが必要です。
私は、自分の最期は、パートナーや友人たちに会いたいと思っています。そのためにも自分自身でしっかりと準備することも必要だと思っています。遺言はハードルが高いと思っている方はエンディングノートもオススメです。
これを機にぜひ一度、自分の最期について考えてみてください。