不動産管理ソフトの老舗ダンゴネット(東京・国分寺市)は、今年で創立20周年を迎えた。管理ソフト『賃貸名人』は、前身サービスも含めると15年を超えるロングセラー商品となっている。不動産業界で長く愛される秘訣とは何なのだろうか。(リビンマガジン Biz編集部)
松川竜也代表(撮影=リビンマガジン Biz編集部)
試行錯誤の中で感じた不動産業界成功の秘訣
システム開発の下請けだったダンゴネット(東京都国分寺市)が、賃貸管理ソフトの提供をはじめたきっかけは全くの偶然だった。事務所が入っていたビルの1階にあった不動産会社から、賃貸の管理システムについて相談があったのだ。当時の賃貸管理システムの相場は300~500万円、一部の大手不動産会社が導入するだけで、とても中小地場の不動産会社に手が届く代物ではなかった。2002年、そういった相談を経て、『賃貸名人』の前身である賃貸管理ソフトウェアを発売した。価格は3~7万円と、100分の1の値段だった。
同社の松川竜也代表は「不動産業界は変化や新しいモノを嫌います」と振り返る。賃貸管理ソフトをきっかけに不動産会社に向けたサービスの開発をスタートした。しかし、諸手をあげて歓迎される商品はなかったという。不動産業界の保守的な体質に何度も直面した。
例えば2007年に商品化したクレジットカードによる賃料決済サービスだ。連帯保証人が用意できない人や新社会人といった入居者にも不動産会社にもメリットがあったが、全く売れなかった。
また、携帯サイト上に不動産会社の店舗を開設できるサービスを構想したこともある。ウェブ上の仮想店舗サービスは、楽天市場の不動産版といったものだったが、「いまひとつ理解してもらえなかった」(松川)。言うまでもなく、現在では不動産ポータルサイトは不動産会社の主要な集客口になっている。
そういった経験から、松川は「業界の内側から出てくる不満や要望に応えていくことが、成功の秘訣」であるということを学んだという。
思えば、賃貸管理ソフト開発のきっかけも不動産会社からの相談が始まりだったではないか。「提供側が先手で不動産業界に便利なサービスを押しつけても、業界全体にその良さは伝わりません。業界が内側から不便や不満に気づいて初めてソリューションのきっかけが生まれるのだと思う」。
不動産会社からの要望を汲み上げる体制を構築
賃貸管理ソフト『賃貸名人』は、前身の賃貸管理ソフトを含め、その歴史は15年以上にもなる。2005年のリリース当時は、台帳機能だけのサービスだった。すると、管理方法や種別といった登録項目に関する要望や、契約内容の機能追加に関する不満が、次々と集まってきたという。
「変化を嫌う不動産会社から上がってくる要望は、実現してほしいという強い気持ちがこもっています」(松川)
同社は、コールセンターに寄せられる要望や、担当営業マンに寄せられる不満をデータベース化している。そして、意見の多かったモノについては機能追加を検討する会議を半年に一度、行う。また、ボタンの位置や配色と行った使いやすさに関する会議は3カ月に一度のペースで行われる。
こうした結果、当初単機能だった『賃貸名人』は、今では50以上の機能が追加されている。2018年3月までのバージョンアップ回数は実に80回を超える。
松川は「ひとりよがりな余計な機能はない。すべて不動産会社からの要望によって追加した機能です」と語る。不動産業界が本当に求めているものを、業界の中から集めて実現させる体制が構築されている。
その結果、利用会社は5,000社を超え、賃貸管理ソフトではトップシェアを誇っている。
ダンゴネットが目指す未来とは
松川は「賃貸管理ソフトウェアだけではなく、あらゆるソリューションを提供したい」と今後の目標を語る。
実際に、2014年から提供を開始した『集客名人』は、店舗の窓に設置するLEDパネルだ。
集客に関する不満などが多く寄せられ、来店集客を挙げるために開発した。売れ行きも上々で、『賃貸名人』次ぐ主力商品になる可能性もあるという。
「不動産会社が何か困ったら、とりあえずダンゴネットに相談してみよう、と思ってくれる会社にしていきたいと思います」と松川は語る。
不動産業界においてなくてはならない会社を目指している。
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