7月3日に路線価が発表された。
路線価とは相続税や贈与税にかかる税金を求めるために必要な指標。毎年1月1日時点の土地の価格を国税庁が発表する。
銀座・鳩居堂前(東京都中央区銀座5)が、32年連続で日本一になった。価格はバブル期の3,650万円/㎡を超え4032万円/㎡と過去最高額になった。
では、この1年、メディアを賑わしたあの場所の土地価格に変化はあったのだろうか。走る不動産鑑定士 藤田勝寛氏に監修をお願いし、話題のあの場所の路線価を調べた。(リビンマガジン編集部)
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7月2日の都議会選挙において歴史的大敗を喫した自民党。その要因の一つに、安倍晋三首相の学校問題がある。渦中の2つの学校。路線価評価は変化したのだろうか。
森友学園一連の報道(撮影=リビンマガジン編集部)
■瑞穂の國記念小學院 大阪府豊中市野田町10(敷地面積:8,700㎡)
国と学校法人森友学園をめぐる国有地売却事件。国有地の払い下げに関して、鑑定額9億5,600万円からゴミの撤去費用として約8億円を差し引いた1億3,400万円で売却していたことが利益供与にあたるのではないかと問題になった。
では路線価に変化はあったのだろうか?
2016年度路線価:14.5万円/㎡ 土地価格:12億6,150万円
2017年度路線価:14.5万円/㎡ 土地価格:12億6,150万円
結果は1年を比べて横ばいだった。
【走る鑑定士:藤田勝寛氏によるコメント】
阪急宝塚線「庄内」駅から徒歩12分程度。もともとは土地区画整理事業により平成17年に造成された「野田中央公園」。豊中市は常に「住みたいまち」のランキング上位に位置する人気ベッドタウンなので、マンション用地にするのが良いのでは?仮に民間のデベロッパーが用地購入すれば高値売却の可能性があります(だから問題になったのですが・・・)。
良い点:梅田駅まで電車で10分程度。周辺に公園や学校等が多くあり、若いファミリー層が住むには良いエリア。
悪い点:北側に名神高速道路が走っているので騒音や排気ガスの懸念はあり。
加計学園一連の報道 (撮影=リビンマガジン編集部)
■加計学園本部 岡山理科大学 理大町キャンパス 岡山県岡山市北区理大町1-1(敷地面積:168,000㎡)
安倍首相の腹心の友、加計孝太郎氏が理事長を務める加計学園。同法人が運営する岡山理科大学の獣医学部新設をめぐり、安倍首相のご意向が働いたのでは無いかと国会も紛糾。上半期最大の政治疑惑となった。
問題の獣医学部建設予定地は、愛媛県今治市いこいの丘1-3で、敷地面積は16万8,000㎡といわれている。こちらの土地価格も気になるが、このエリアに路線価がないため加計学園本部の価格の推移を調べた。ただし、こちらも路線価がなかったため、周辺の住宅街の路線価より推測した。
2016年度路線価:4万円/㎡ 土地価格:314億円
2017年度路線価:4万円/㎡ 土地価格:314億円
結果、こちらも前年から変化はなかった。
【走る鑑定士:藤田勝寛氏によるコメント】
岡山理大を中心に高校や専門学園が集積しており、岡山駅からは約4キロ離れています。
周辺にはほぼ何もない高台のエリアで、ある意味勉強に専念するには良い立地かもしれません。ちなみに岡山理科大学の㏋には現時点で「獣医学部(仮称、認可申請中)」とありました。今後どうなっていくのでしょうか?
良い点:非常に地価が安いため、大学のような大規模施設の利用には非常に適している。周辺アパートの家賃も安いため、学業に専念する学生にとっては良い立地かもしれない。
悪い点:大学の経営が不振になった際には、跡地利用に困るような場所ではある。大規模であるし、そもそも立地的に新規の住宅需要も厳しい。
東京都にある2つの台所。築地、豊洲の価格に変化は?
2016年8月の小池百合子東京都知事が就任以来、混乱を続けていた築地市場の豊洲移転問題。
6月になって、小池知事は築地と豊洲「共存案」を提示した。豊洲に市場を移したのち、5年後をメドに築地を市場機能を持つ場として再開発するという。築地派・豊洲派の両方から「いいとこどり」との批判が噴出しているが、この2つの市場の路線価には変化があったのだろうか?
築地市場 (画像=写真AC)
■築地市場 東京都中央区築地5丁目2−1(敷地面積:230,000m²)
2016年度路線価:132万円/㎡ 土地価格:3,036億円
2017年度路線価:145万円/㎡ 土地価格:3,335億円
前年と比べると約10%価格が上昇していた。
【走る鑑定士:藤田勝寛氏によるコメント】
地価自体は上昇。移転先(豊洲新市場)と比べると、単価ベースで資産価値は約3.9倍。いろいろと問題点も指摘される市場移転ですが、資産価値だけ見れば都心に近い築地の圧勝となりました。
良い点:なんといっても都心への接近性。銀座まで徒歩ですぐの立地は魅力的。
悪い点:東京オリンピックに向け、開発予定の環状二号線はどうなる??
豊洲市場 (画像=写真AC)
■豊洲市場 東京都江東区豊洲6丁目 (敷地面積:407,000m2)
2016年度路線価:38万円/㎡ 土地価格:1,546.6億円
2017年度路線価:39万円/㎡ 土地価格:1,587.3億円
前年と比べて、約2%の上昇だ。
【走る鑑定士:藤田勝寛氏によるコメント】
築地と比較して地価の上昇も緩やか。立地として首都高速晴海線「豊洲インター」から近いですが、やはり全体として交通アクセスが築地に劣り資産価値の差となっています。
良い点:老朽化の著しい築地と比較して、豊洲の新設備(特に空調関係)で鮮度がより保たれるとの見解は魅力的です。
悪い点:築地と比較した際の交通アクセスは劣ります。また、敷地内の道路等が狭く、使い勝手も劣るとの意見も。そして、やはり土壌汚染の問題はマイナスイメージです。
政治と深く関係を持つ土地・建物の路線価を紹介した。どの地域も価格は落ちることなく、上昇か横ばいになっていることがわかった。裏を返せば、こういった価値がある地域だからこそ、いろんな問題で揉めざるを得ないということだろうか。
後編は、藤田勝寛
資格:不動産鑑定士、行政書士、宅地建物取引士、相続診断士
(株)あかつき不動産サービス(不動産鑑定事務所):代表取締役
士業ネットワークのあかつき不動産(株)(不動産仲介会社):代表取締役
※本文中の価格(総額)は7月3日発表された路線価に基づきます。