プロ野球の球団が本拠地をおく野球場は、不動産価値ではいったいいくらになるのか。
野球ファンなら誰もが気になるこの話題を取り上げたのが、「プロ野球の球場、不動産価値はいくらなのか?セ・リーグ編」の記事だ。
大好評を博した前回記事をうけて、今回はパ・リーグ編をお届けする。
野球場の土地価格ランキング
かつては人気のセ!実力のパ!と呼ばれていたパ・リーグ。
セ・リーグとの人気差は大きく、ガラガラの客席にて試合そっちのけでキャッチボールに興じる観客の姿や、やたらとよく通る(そして笑える!)応援団長の嘆き節など、少しばかりの悲哀とともにパの本拠地を記憶しているオールド・ファンも多いだろう。
しかし、そんな姿は、今は昔だ!
交流戦で大きく勝ち越すなど実力で圧倒しつつ、なおかつ人気でもセのチームをしのぐパ・リーグ球団は少なくない。
地域に根付いて愛されるパ・リーグの球場土地価格を比較する。
今回も不動産鑑定士・木村修氏の監修をもとに不動産価値を算出した。
算出方法も前回と同様で、球場の公式HPに記載されている建築面積(建物を真上から見たときの面積)に路線価を掛け、公示価格に近付けるため0.8を割り戻した金額でランキングを出した。
(建築面積×路線価÷0.8)の計算だ。
建物価格は不確定の要素が多いため、今回も土地価格のみで比較する。
早速だが、結果は以下の通りだ。
1位:ヤフオク!ドーム
1位はソフトバンクホークスの本拠地ヤフオク!ドームだ。
価格は2位以下を大きく突き放す約271億円だ。

さすがは今や世界企業となったソフトバンクといったところだ!
ヤフオクドームは、東京ドームに次いで我が国2番目のドーム球場として作られた。立地に目を向けると、路線価は高いわけではないがとにかく球場が大きい。
実はセ・パ両リーグ合わせても一番大きい敷地を持つ球場なのだ。交通アクセスはというと、最寄り駅は福岡市営地下鉄の唐人町駅だ。
しかし、駅からは徒歩15分とやや距離がある。
周辺にはホテル、事業所、領事館などがあり、商業立地として優れているとは言い難い。やはり他の施設に転用などせず、地元で絶大な人気を誇るホークス人気を中心にした開発がメーンとなるだろう。
2位:京セラドーム大阪
2位はオリックス・バファローズの本拠地、京セラドーム大阪の約103億円だ。

こちらは、東京ドーム、福岡ドームに次ぐ3番目に完成したドーム球場。
最寄り駅は、阪神なんば線のドーム前駅から徒歩1分、地下鉄長堀鶴見緑地線のドーム前千代崎駅から徒歩2分と交通アクセスは抜群に良い。
しかし、「大阪といえば、道頓堀、心斎橋、梅田だが、ドームは中心からはやや外れにあります。インバウンドの観光客が回遊するような立地ではない」と大阪出身の木村氏は評価する。実際、バファローズは人気球団とは言い難く、ここ数年の順位も芳しくない。
生粋の大阪モンに「外れ」と評されてしまう球場立地にも一因があるのかもしれない。
3位:札幌ドーム
ペナントレースでは、CS進出チームとなる3位に滑り込んだのは札幌ドームだ。
算出価格は約60億円となった。

日本ハムファイターズだけでなく、Jリーグのコンサドーレ札幌の本拠地としても使われている。
野球とサッカーのプロチームの本拠地を兼ねるのは札幌ドームだけだ。2002年にはサッカーW杯も開催された。また、パ・リーグ球団の本拠地球場でネーミングライツを販売していないのもここだけだ。
立地はさっぽろ駅から最寄りの福住駅まで約13分で、福住駅からは徒歩約10分。
さっぽろ駅からのシャトルバスが発着しており、交通アクセスはまずまずと評価される。しかし木村氏は「札幌市中心部からはやや遠隔にあり付近は住宅および牧草地が広がる。転用は効くが売却には相当の期間を要すると予測される。そういう意味では資産性はやや弱いと言わざるを得ない」と厳しい評価だ。
実際に、日本ハムファイターズは数年のうちに新たに建設する新球場への移転を決めているとされており、稼働日数が大幅に減ってしまう将来を悲観する声もある。
4位:メットライフドーム
4位はメットライフドームで約36億円だ。

かつての名称は西武球場で、屋根のない球場だったが、1999年に後から屋根を取り付けたことでドーム球場となった。ドーム化される前は夏の野外コンサートの会場としても有名だった。
球場の横には、小高い丘に囲まれた緑の多い立地環境だ。
木村氏は「現況のスポーツ競技場敷地としての土地利用は最有効使用と判断します」と高評価だ。しかし、交通アクセスはあまり良くない。最寄り駅は、西武狭山線の西武球場前駅だ。
池袋から約32分。新宿からは45分と電車を利用する場合、時間に余裕をもって向かった方がいいだろう。本拠地として使用する西武ライオンズの前身は、福岡にあった西鉄ライオンズ。経営の悪化で西鉄が球団を手放すこととなり、太平洋クラブやクラウンライターを経て現在の西武鉄道グループに売却された。親会社が西武になり、所沢に移転する際は選手たちから「あんな田舎は嫌だ!」と猛反発されたという話は野球ファンに語り継がれている。
5位:ZOZOマリンスタジアム
5位はZOZOマリンスタジアムの約26億円だ。

1988年に多目的球場を目指して建設が始まり、1992年から千葉ロッテマリーンズの本拠地として始動した。野球ファンには「千葉マリン」として親しまれていたが、テレビショッピング会社のQVCが命名権を購入、さらに昨年にはネット通販会社のスタートトゥデイが命名権を購入。昨年12月からZOZOマリンスタジアムに変更され、マリーンズファンの編集部Nから失笑を買った。
東京湾に隣接する埋め立て地に建設された球場で、「幕張駅周辺の一帯的な開発が進み、お父さんは野球、お母さんは買い物、小さなお子様や若いカップルが遊ぶ海浜公園も隣接しておりレジャー性が高い立地環境です」と木村氏の評価だ。もし転用するなら商業利用が良い場所だろう。
6位:koboパーク宮城
最下位になったのはkoboパーク宮城だ。評価額は約20億円とあいなった。

路線価は他の地域と比べて低い訳ではないが、球場の大きさが反映されてしまったかもしれない。
仙台駅から真っすぐの一本道でたどり着ける交通アクセスは良く、電車でも最寄りの宮城野原駅まで仙台駅から約5分だ。仙台駅からは徒歩でも約20分と十分にアクセスできる距離だ。
昨年には球場を見下ろす大観覧車も完成、米国風のボールパーク構想を進めており、仙台駅一帯とあわせた開発に期待したい。
前回のセ・リーグと合わせてセ・パ両リーグの球場価格を算出した。12球団すべてを見渡すとやはり東京ドームの806億円の評価額は図抜けており、球界の盟主の面目躍如といった趣もある。
セ・パの傾向を比べてみると、パでは小さな中核都市の球場が多いため、評価額にセほど大きな差は出なかった。
しかし、多くの球場は地域のよりどころとして機能しており、評価額には現れない価値があるのは間違いない。「不動産価値に表れない感動を共有したい。」とは木村氏の弁だ。
子どもも、大人もたくさんお思い出を刻み続けているのだろう。
昭和のプロ野球ファンが、ガラガラだった今は無き野球場を思い出すように…
川崎球場、難波球場、西北球場、平和台…
(監修)
木村 修
木村不動産鑑定㈱
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