ここが危ない!住宅に潜む子どもの事故の危険性
今年3月、ハチミツの入った離乳食を与えられていた生後6ヶ月の乳児が、幼児ボツリヌス症で亡くなった事件は、全国紙に大きく報道され衝撃を与えた。その後、料理レシピ検索サイト「クックパッド」にもハチミツを使った離乳食のレシピが多数投稿されていたことから、同サイトの食の安全に関する批判の声が高まっている。
乳幼児を含めた子どもの死亡事故は、食品の誤飲・誤食に限ったものではない。例えば今年3月25日、埼玉県川口市の団地に住む3歳児が8階ベランダから転落死した事故(朝日新聞デジタル)などは、住まいにも子どもの生命を脅かす危険があることを改めて思い知らされる。住宅に潜む子どもの死亡リスクについて、小児科医でNPO法人Safe Kids Japanの山中龍宏理事長に聞いた。
住宅で起きる子どもの死亡事故数
世界保健機関(WHO)基準の分類では0~19歳までを「子ども」としている。
子どもの死亡原因で一番多いものは何かご存じだろうか。0歳児に限れば「先天的な奇形・染色体異常」が一番だが、1~19歳の死因第一位は「不慮の事故」である。
山中氏によると、2015年の子どもの不慮の死亡事故数は588件。そのほとんどが家庭内での事故で、あらかじめ対策していれば防げるものが多いという。では、どういったところに危険があるのだろうか。
家庭内事故が多いのは風呂場
まず、事故が多いのが風呂場だ。
最近の浴槽は、高齢者を意識して作られており、ヘリが低くなっていることが多い。浴槽のヘリが50cm以下の場合は注意しなければいけない。ちょうど歩行を覚えたばかりの1歳児がヘリに足をかけたり、浴槽を前のめりに覗き込める高さが50cmだからだ。「最近は、洗濯や災害時のために残り湯を溜めている家庭が増えたため、浴槽に転落し溺れてしまう事故が多発している」とのこと。風呂場での死亡事故は毎年40件ほどある。
死亡リスクが高いベランダ事故
また、先述したベランダからの落下死亡事故も年間に20~30件ほど起こっている。昨今のベランダは、横柵や横板になっているものが多く、子どもが足をかけてよじ登ることができてしまうことが原因の一つだという。
またエアコンの室外機の上にあがり、外に転落してしまうケースも多い。子どもが誤ってベランダに出ないように補助錠の設置、窓の開閉を調整するストッパーの取り付けで防止することができる。
他にもある住まいの危険個所
また、死亡事故に限らないが、階段からの転落事故は毎年非常に多いという。他にも、電気コンセントに金属片などを差し込み感電したやけど事故は、今年2月までの6年間で約30件起きていると消費者庁が発表している。気付きにくいところでは、服に取り付けられたフードが玄関ドアのノブに引っ掛かり、首を吊ってしまう事故などもあると山中氏は語る。
事故が起こる原因は、親がこだわる「デザイン性」?
子どもの事故は、昨今の家づくりにも要因があるという。
「リビング階段」などがその代表例だ。家を建てる際、家族とのコミュニケーションの取りやすさや、開放的な間取りにするために、リビングに階段を設けるケースがある。壁から踏板がむき出しになっている「片持ち階段」や「力桁(ちからげた)階段」は、手すりがないため事故が起こる可能性が高いと山中氏は指摘している。
また、子育ての道具を選ぶ際、輸入製品を選び、子どもの体に合わないため事故を招く報告例は、抱っこ紐やベビーベッドなど多岐にわたっている。
これらの背景には、デザイン性を重視する親の志向がある。子育ての雰囲気を嫌い、本来であれば子どもの命を守るための安全性を軽んじられている傾向にあるのだ。
行政が取り組む子どもの安全を重視した支援制度
行政もこういった状況を前に黙っているわけではない。
東京都墨田区では「子育て世帯住宅リフォーム支援制度」という制度を設け、安全に子育てができる居住環境の整備を目的に、助成金を交付している。
この制度は、東京都整備局のガイドラインに基づいて、「手すりの取付工事」や「段差の解消」、「コンセント位置の移動」といった10種類のリフォーム工事に対し、工事費の3分の1(上限20万円)を援助するというものだ。しかし、平成27年から始まったこの制度は、現在までに申請数はわずか4件しかない。
NPO法人Safe Kids Japanでは、子どもの事故に関する情報の募集・公開を行っている。
協賛企業も募っており、詳細に関してはHPにて確認することができる。
NPO法人Safe Kids Japan HP