大学外観 ※国際教養大学 提供
3月30日に「THE世界大学ランキング 日本版2017」が発表された。
英国の教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションが
毎年発表している世界大学ランキングの日本版である。
世界版では大学の研究力や学術力を主軸に置いているが、
日本版では大学の「教育力」を測って作られている。
ランキングには1位の東京大学をはじめとして、
有名大学が並ぶが20位に国際教養大学(秋田県)が入っているのが目を引く。
国際教養大学は2004年に新設されたばかりで、
並みいる大学を押しのけてのランクインは快挙といっていい。
さらに特徴的なことにこの大学は、新入生全員が学内にある寮に入る
全寮制の決まりがあるという。
住宅と学問の関係性について取材すると、深い関係が分かった。
※出典:タイムズ・ハイヤー・エデュケーションより
国際教養大学の住宅と学問
国際教養大学についてまず特筆すべきは、
1学年の人数が175名と少数精鋭であることだ。
学部は国際教養学部一つだけで、1年生は入学と同時に学内の寮で生活を始める。
2人部屋の寮では留学生と共同で生活する。
「生活文化の違う者同士がルールを決めて過ごすことで、
問題解決能力やグローバルな人間を育てるために寮生活にしています」とは
同大学の事務局長だ。
親元を離れたばかりの新入生を外国人と共同生活させる荒療治で、
現代っ子が苦手とするコミュニケーション能力をしっかりと身に付けさせるのだ。
寮生活風景 ※国際教養大学 提供
さらに寮はキャンパス内にあり、講堂、図書館と渡り廊下でつながっており、
勉強専念できる環境を整えている。
なんと、図書館は24時間使えるという。
「寮生活のおかげで、いつでも勉強できる環境があります。
そういった意識の違いがランキングに関係しているのではないでしょうか」(事務局長)
実際に深夜まで、図書館で勉強をしている学生も多いという。
2年生以上の学生にも、キャンパス内に宿舎があり勉強に集中できる環境を作っている。
1年間の寮生活で土台作りをした学生は進級してからも良く学ぶのだ。
図書館 ※国際教養大学 提供
国際教養大学の「教育力」
国際教養大学は4年間での卒業率が50%を切るほど、進級、卒業が
難しいことでも知られている。
(4年制大学の平均卒業率は、文部科学省統計78.1%)
このツライ勉強も乗り越えるにも、寮生活が重要だという。
一緒に過ごす時間を多くし、互いに励まし合いながら勉強させることで
高い学力をつけさせているという。
こうした厳しい環境を作ることで、優秀な学生を多く輩出している。
企業側にもよく知られており、就職四季報プラスワン調べの
「有名企業への就職率が高い大学ランキング」では全国5位という好成績をだしている。
他大学の居住形態
こうした同大の躍進は1年時にさせる寮生活が基盤となっていると言っていいだろう。
では、ランキングに入っている他大学の住宅事情はどうだろう。
各大学に問い合わせたが、生徒の居住形態については無頓着だ。
最低限、住所は把握しているが実家暮らしか、
一人暮らしかも把握していない大学がほとんどだ。
授業を受けている時間より、それ以外の時間の方がはるかに長い。
新興の大学の躍進に学ぶことは多いのではないだろうか。