マンション広告がポエム化する理由を聞いてみました


マンションの販売チラシで聞き覚えのない造語や、当て字、言い換えが多用されるいわゆるマンションポエム。背景には文言の規制やマンション建築の構造的問題があった。マンション販売会社の担当者や広告代理店の証言をもとにマンションチラシがポエム化する理由を探る。


(文中の画像はマンションポエムが生まれる過程を、取材を基に再現したものです。)

徒歩1分は80メートル 規制が多い不動産広告

ネットメディアから火が付き、一般紙、雑誌などでも取り上げられることが多くなったマンションポエム。

「邸と書いて住まいとルビを振るとかね、聖域を静域と当て字にするとかよくありますよ」と語るのはマンション販売に関する広告業務で多数の実績がある広告代理店の代表だ。

「違う文言も提案するんですけどね。結局あれ(ポエム)が選ばれるんですよ」と苦笑い。

制作者でも実はあまりよくは思っていないマンションポエムが、生産され続ける背景には不動産広告への規制が大きく関係しているという。

実はマンションの販売チラシだけでなく、雑誌、不動産検索サイトなどに物件広告を出す場合、多くの規制が存在している。

表示すべき内容や、表示した数値の測定法も決まっている。

例えば、測定法徒歩1分は道路距離にして80メートル以内と決められている。

業界団体の不動産公正取引協議会が取り締まっており、違反があれば通達を出す。全国に分会がある。その一つの首都圏不動産公正取引協議会では昨年300件以上の通達を出した。

違反として取り締まりの対象になるのは、例えば下記の文言だ。

①完全、完ぺき、絶対など用語
②日本一、抜群、当社だけのなど用語
③特選、厳選など用語
④最高、最高級など最上級を意味する言葉用語
⑤格安、掘り出し物、土地値など用語
⑥完売など著しく人気が高く、売れ行きが良いことを意味する用語

どうだろう。かなりの制限がある中で、文言の制作をしているのだ。

普通すぎるマンション

2つ目の理由として設備で分かりやすい差別化ができなくなっている現状がある。

「マンションに関する設計や建築・施工に関しては、規格化がすすんで、もうどこも一緒です。23区内でも地方でも、建物の値段自体は大きく変わりません」と話すのは建築会社の設計室で働いていた人物だ。

「違うのは土地の価値くらい」と証言する。土地に対する漠然としたイメージを言葉にする際にポエム化が加速していくのだ。

最高額商品の呪縛

3つ目の理由はマンションが高額な商品であることが大きく関連してくる。広告代理店の代表が語る。

「ほとんどの人にとって、マンション購入は一生で一番高い買い物です。やはり高級感が重要になります」

日本人は平均して1,8回しか家を買わないといわれている。ほとんどの人にとって、マンション購入は一生に一度しかない経験だ。

 
そのため、日常使わない言葉をあえて使い、人生初の決断を促す必要があるという。商品であるマンションの機能にはほとんど差がなく、多くの文言を封じられたまま「高級感」や「非日常感」を想起させる言葉が思い浮かぶだろうか?

「本当、苦労します」と先述の代理店代表もため息をつく。

不動産広告の表示に関する規制、分譲マンションの平準化、そして高級感が必要な高価格商品の宿命。がんじがらめの中、代理店やマンション販売会社の担当者の苦悩は深い。

こうして…ポエムは生まれるのだという。

 
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