新宿・歌舞伎町―アジア最大の歓楽街には欲望と人が入り乱れる。
夜の街で働く女性の住宅事情を歌舞伎町の不動産仲介会社の社員に聞いた。
(前編はこちらから)
絶対に仲介しない職業とは
キャバ嬢、風俗、黒服…ときには区役所からの依頼で生活保護受給者の物件仲介もやる。しかし「ホストの仲介だけは絶対やらない」とAさんは決めている。
ホストの世界では常連客にツケで飲ませて売上げを稼ぐ仕組みがある。当然、期日までに払いがなければ給料から天引きされるため、ホストは客の支払い能力を見極める必要がある。しかしホスト同士の競争心からしばしば無理な飲ませ方をすることがあり、店への売掛が何千万円といった莫大な金額になることもある。当然、家賃滞納も発生する。
追い込まれたホストに残された道は、「飛ぶ」しかない。夜逃げだ。こうしたツケで飲ませる風習はかなり減ったらしいが、「自分の信用を無くすんで」今もホストお断りは変えていない。
6割が家賃支払い遅れも未回収は0!
Aさんは歌舞伎町からほど近い新宿区内にある賃貸マンションの管理も受け持っている。入居者の多くはAさんが部屋を仲介したが、家賃の支払い遅れが頻出しており60室以上ある入居者の8割が入金しない月もある。
「それでも電話すれば、ほとんどがなんとか金を作って数日以内に払います。1%くらいは何か月分も滞納しちゃいますけど」
そういった入居者は退去してもらうことになるが1%しかいないなら、なにも歌舞伎町に限った話ではない。
そのほかに、Aさんが困っているのはゴミ出しのマナーだ。溢れかえったゴミ置き場の写真を見せてくれた。ただ、ゴミ出しの問題もよくあるトラブルだ。
ー実際に起きるトラブルは、水商売も歌舞伎町も関係ないのでは?
とAさんに尋ねてみると、「本当そうですよ」と答えた。
「水商売の女の子には生活が派手で、貯金できない子が多い。でも、来店する伊勢丹や高島屋で働いている女の子も同じです。そんな子は、どこにでもいますよね」
お客がアイドルデビュー 出会いの連続
最近、Aさんの強い武器となっているのがLINEだ。
1000人以上の友達がおり空室情報を流すと必ず問い合わせがある。入居が決まることも多い。入居にいたる決定力が高いので、空室を抱える管理会社からLINEに投稿してもらうよう頼まれることも増えた。不動産ポータルサイトに広告をださなくても無料で問い合わせが入るLINE砲は歌舞伎町界隈の賃貸不動産関係者にちょっとした話題だ。
キャバ嬢と接するなかで思わぬ出会いもある。これまでに上場企業の幹部や大物政治家と同席することもあった。物件を紹介し、六本木のキャバクラで働いていた女の子は海外に渡り現地でアイドルグループとしてデビューした。その子が大写しになったラッピングバスを日本で見かけたときは驚いた。
「歌舞伎町で、こういう仕事をやっていないと出会うことがなかった人がたくさんいますよ」
こうした出会いが歌舞伎町で不動産仲介として働く一番の魅力かもしれない。