みなさま、こんにちは。相続コーディネート実務士の曽根惠子です。
「相続実例」として、遺言書を作成されたお客様の事例をご紹介いたします。
今回は、同居して面倒を見てくれている長男に財産を多く渡したいKさんの事例です。
◆相続人関係図
遺言作成者 母 Kさん 80代
推定相続人 長男 50代 二男40代
◆家族と相続の状況〈長男と同居、次男は外に出ていてあまり顔を出してくれない〉
Kさんは二人の息子に恵まれました。長男は結婚の機会を逃してしまい、独身ですが、
お陰でずっと同居してくれており、親からすれば親子で仲良く過ごしてきました。
二男は結婚を機に家を離れ、家族を優先するため、ほとんど実家には顔を出さないようになりました。
Kさんは、昨年、夫を亡くし、相続の手続きをしました。
円満な家庭でしたので、夫は遺言など思いもしなかったのでしょう。
長男が中心となって手続きをしましたが、細かいところで次男が文句を言う場面があり、
簡単に決まると思っていたのに、思い外、時間がかかってしまいました。
これでは、自分がいなくなったら、ますますうまくいかないのでは不安になりました。
◆遺言を作る理由〈兄弟で紛争になってしまうことを避けるため〉
親がいなくなると兄弟二人になります。
いくら兄だからといっても話し合いで弟を納得させることができるか、わかりません。
夫の相続手続きで、次男の性格がわかったため、やさしい長男では対抗できず、
実家を売って等分に分けることになったり、もめてしまうかもしれません。
しかも、長男は独身のため、次男ともめると頼れる人がいなくなり、老後の不安も出てきます。
こうした不安がなく、兄弟仲を保てるよう遺言をしておきたいと考えました。
◆遺言書がないと困ること
・同居して面倒を看てもらっている長男に多く相続させたい
・二男が等分の財産を請求されると実家も売却しなければならない
・二男への配分が少ない理由を残しておかないと紛争の種になる
◆ワンポイントアドバイス
・遺言書を残しておくことで、実家を残して継承してもらえること
・付言事項で分け方の理由を記載し、気持ちも添えると説得材料となる
【遺言書を作るときに配慮したいこと】
◇こっそり作らない・・・相続人に知らせておくことが大切
◇遺産分割は公平にするのが無難・・・遺留分には配慮しておく
◇公平な遺産分割にならないときは理由を明記する・・付言事項を活用し理由や意思を書いておく
◇財産のことだけでなく、感謝や気持ちも残す・・・意思を残すことは最良の説得材料で価値がある
◆遺言書の必要度カウンセリング◆1つでも該当すれば遺言書が必要です
◇遺言を残した方がよいケース
①自分の境遇 【独身・配偶者・子供なし】【離婚・再婚】【異父母兄弟】
〈独 身〉独身で子供もなく、親か兄弟姉妹が相続人になる場合
〈配偶者が他界〉配偶者がすでに他界し、子供が相続人になる場合
〈子がいない〉結婚しているが子供がなく、配偶者と親か兄弟姉妹が相続人になる場合
〈相続人がいない〉独身で子供がなく、親も兄弟姉妹もいない場合
〈再婚、認知〉先妻、先夫の子供と後妻、後夫の子供、認知した子供等がある場合
②家族関係 【疎遠・不仲】【同居・介護】【内縁・認知】【行方不明】【海外在住】【代襲人】
〈不 仲〉家族間ですでに争いを抱えていたり、疎遠、対立している場合
〈同 居〉相続人が複数同居している場合
〈介 護〉介護をしている、介護を受けている場合
〈内 縁〉内縁関係の夫、または妻がいる場合
〈行方不明〉相続人が行方不明で遺産分割協議ができない場合
〈海外在住〉海外在住で手続きが複雑になる場合
〈代襲相続人〉子供や兄弟姉妹が先に亡くなり、代襲相続人がいる場合
③財産の内容 【不動産】【使用貸借】【共有】【会社・家業】【贈与】
〈不動産〉 財産の中に不動産があり、分けにくい場合
〈使用貸借〉無償で借り受けて住んでいる相続人がいる場合
〈共有名義〉不動産の共有名義に相続させたい場合
〈会社経営〉同族会社や家業があり、継承したい場合
〈生前贈与〉贈与をした財産があり、明確にしておきたい場合
④特別な思い 【分割】【寄与】【争い回避】【跡継ぎ】【援助】【遺贈】【寄付】
〈遺産分割〉特定の相続人に多く分けたい、または分けたくない場合
〈寄 与〉老後や介護や事業に貢献してくれた相続人がいる場合
〈争い回避〉家族で争わないよう分割を指定したい場合
〈跡継ぎ〉 家を継承してくれる人に多く残したい場合
〈援 助〉援助が必要な相続人に財産を多く遺したい場合
〈遺贈〉相続権のない孫や嫁、兄弟姉妹など相続人以外に財産を渡したい場合
〈寄付〉お寺、教会等、希望する団体、法人に寄付する場合