みなさま、こんにちは。相続コーディネート実務士の曽根惠子です。
今回は、長男が海外へ永住して老後は期待できないMさんの事例です。 「相続実例」として、遺言を作成されたお客様の事例をご紹介いたします。
◆相続人関係図
遺言作成者 父 Mさん 70代 無職
推定相続人 長男 40代 会社員・海外に永住予定
長女 30代 主婦
◆家族と相続の状況〈父は単身で生活。海外生活をする長男には頼れない。〉
Mさんは妻に先立たれ、現在独り暮らしです。Mさんの年代では、長男が親と同居して、
面倒を看るのが当たり前の時代でしたが、長男は家族とともに海外で生活しており、
永住権も取得しているので、日本に帰る気持ちはなさそうです。
そうしたことで、自ずと、何かと娘に助けられている状況で、他県に嫁いでいますが、
子育ての最中で忙しいときでも、Mさんを心配し、定期的に様子を見に帰ってくれます。
□遺言を作る理由
妻は急な山の事故で亡くなったため、遺言はありませんでした。
預貯金の名義を替えるにも海外にいる長男の書類も必要になるなど、娘は大変な苦労をしていたため、
自分のときは苦労を掛けたくないと思っています。自分が公正証書遺言を作成しておくことで、
相続手続をスムーズに進められるようにしておきたいと考えました。
妻が亡くなったとき、長男は葬儀にも参列しなかったのに、財産は法定割合はもらうと言って、預金をもって帰りました。
これでは、自分が亡くなったあとでは、同居も世話もしなかった長男が、財産の半分を要求することは明らかです。
娘は老後の世話やお墓の管理をすると言ってくれているので、
なるべく長女に財産が残るような配分として遺言を作ることにしました。
◆遺言書がないと困ること
・長男は法定相続分の2分の1の財産を相続するつもりでいる。
・分割協議になれば長女に財産を多く残すことはかなわない。
・妹である娘は兄の理屈には勝てないため、遺言がないと勝ち目がない。
◆ワンポイントアドバイス
・身の回りの世話をする長女に財産を残すには遺言を残しておくことが必要。
・遺言執行者を指定しておけば、遺言の正本で相続手続ができる。
・長男には遺留分に抵触しない範囲で、現金を残す配慮をしておく。
【遺言書を作るときに配慮したいこと】
◇こっそり作らない・・・相続人に知らせておくことが大切
◇遺産分割は公平にするのが無難・・・遺留分には配慮しておく
◇公平な遺産分割にならないときは理由を明記する・・付言事項を活用し理由や意思を書いておく
◇財産のことだけでなく、感謝や気持ちも残す・・・意思を残すことは最良の説得材料で価値がある
◆遺言書の必要度カウンセリング◆1つでも該当すれば遺言書が必要です
◇遺言を残した方がよいケース
①自分の境遇 【独身・配偶者・子供なし】【離婚・再婚】【異父母兄弟】
〈独身〉独身で子供もなく、親か兄弟姉妹が相続人になる場合
〈配偶者が他界〉配偶者がすでに他界し、子供が相続人になる場合
〈子がいない〉結婚しているが子供がなく、配偶者と親か兄弟姉妹が相続人になる場合
〈相続人がいない〉独身で子供がなく、親も兄弟姉妹もいない場合
〈再婚、認知〉先妻、先夫の子供と後妻、後夫の子供、認知した子供等がある場合
②家族関係 【疎遠・不仲】【同居・介護】【内縁・認知】【行方不明】【海外在住】【代襲人】
〈不仲〉家族間ですでに争いを抱えていたり、疎遠、対立している場合
〈同居〉相続人が複数同居している場合
〈介護〉介護をしている、介護を受けている場合
〈内縁〉内縁関係の夫、または妻がいる場合
〈行方不明〉相続人が行方不明で遺産分割協議ができない場合
〈海外在住〉海外在住で手続きが複雑になる場合
〈代襲相続人〉子供や兄弟姉妹が先に亡くなり、代襲相続人がいる場合
③財産の内容 【不動産】【使用貸借】【共有】【会社・家業】【贈与】
〈不動産〉 財産の中に不動産があり、分けにくい場合
〈使用貸借〉無償で借り受けて住んでいる相続人がいる場合
〈共有名義〉不動産の共有名義に相続させたい場合
〈会社経営〉同族会社や家業があり、継承したい場合
〈生前贈与〉贈与をした財産があり、明確にしておきたい場合
④特別な思い 【分割】【寄与】【争い回避】【跡継ぎ】【援助】【遺贈】【寄付】
〈遺産分割〉特定の相続人に多く分けたい、または分けたくない場合
〈寄与〉老後や介護や事業に貢献してくれた相続人がいる場合
〈争い回避〉家族で争わないよう分割を指定したい場合
〈跡継ぎ〉 家を継承してくれる人に多く残したい場合
〈援助〉援助が必要な相続人に財産を多く遺したい場合
〈遺贈〉相続権のない孫や嫁、兄弟姉妹など相続人以外に財産を渡したい場合
〈寄付〉お寺、教会等、希望する団体、法人に寄付する場合