みなさま、こんにちは。相続コーディネート実務士の曽根惠子です。
「相続相談の現場から」として、相談に来られたお客様の事例をご紹介いたします。
今回は70代・女性のSさんが、父親の相続手続きのことで相談に来られました。
◇自宅は5階建ての事業ビル
70代のSさん(女性)は、40代の娘さんと二人で相談に来られました。
Sさんご夫婦は自宅の土地を活かし、5階建てのビルを建てており、賃貸事業をされています。
夫婦とも70代半ばすぎとなり、相続を考える年代になったと。
自宅の土地は約250坪あり、約3億円の建築費をかけてビルを建築しました。
1階は店舗、2階~4階が賃貸マンション9世帯、5階が自宅です。
駐車場も15台分あり、家賃収入は150万円、返済は80万円です。
◇全員が同じビルに住む良し悪し、分け方はどうすれば?
そのうち、4階の1室には長女家族が住んでいます。次女は独身で、Sさん夫婦と同居しています。
家族全員が同じビルに住んでいるので、とても円満に思えますが、それでもSさんにとっては、いろいろと不安があります。
長女は夫と子供がいる専業主婦ですので、普段から賃貸事業に協力は得られません。
そのため、Sさん夫婦ができないことは同居する次女が手伝ってくれているのですが、今後もそうした状況が続くとSさんは考えています。
こうした状況で相続はどう考えればいいかというのがSさんのご相談でした。
◇共有にしない分割案のほうが問題は少ない
負債があるため相続税はかからないことがわかり、課題は不動産の分割方法です。
娘が2人なので、不動産も共有しないと等分にはいかないのですが、共有してからトラブルになりかねません。
Sさんも、姉妹の性格が違うと言われました。
まだ返済は10年以上残っており、賃貸事業は長期に渡ります。
お勧めしたのは、不動産を所有するのはどちらか一人にし、現金をもう一人に相続させる案です。
現金が足りない場合は、いまから生命保険などで補てんする用意をします。
分割案を決めて、公正証書遺言を作成しておくことです。
あるいは、まとまった現金が渡せないようなら、家族信託にて、一定期間、家賃収入を分ける方法も致し方ないこともあるかもしれません。
これから提案していく中で、選択、決断していただくようになります。
◆相続コーディネート実務士から◆
1つのビルに家族全員住んでいるのは美談ですが、分けられない難点があります。
子供世代の人生は長いので、もめない分割案が必要です。
◆ポイント◆
・不動産は共有しないほうがトラブルになりにくい
・分けられない場合は保険などの現金を用意する