みなさま、こんにちは。相続コーディネート実務士の曽根惠子です。
「相続相談の現場から」として、相談に来られたお客様の事例をご紹介いたします。

今回は50代・男性Aさんが、共有の不動産のことで相談に来られました。

◇話し合いがまとまらず実家を4人きょうだいで共有
Aさん(50代・男性)は4人きょうだいの末っ子です。
父親は20年前に亡くなり、その後、母親は5年前に亡くなりましたので、そのときに実家をきょうだい4人で共有にて相続しました。

実家はアパート併用住宅で、全部で8世帯あります。
母親がそのうちの1室に住んでいましだか、施設に入ったときに荷物も処分し、生前から実家の全部を賃貸していました。
母親が亡くなったとき、遺言書もなかったため、きょうだいで話し合いをしたが話はまとまらず、
結果、致し方なく、4人で共有することになりました。

◇きようだいは60代、50代、先が心配
建物は築40年が過ぎていますが、最寄り駅まで5分程度と好立地なことが幸いして、現在も満室となっていますので、家賃を4人で分けています。
しかし、長女、長男はすでに60代、次女、次男(Aさん)も50代となっていますので、このさき順番に相続が発生することになります。
いまのところは、大きな問題もなく順調に賃貸経営ができていますが、このままの状態でさらに何年も共有できるとは限らず、不安があります。

◇弟に売るのはおもしろくない
そこで、自営業で資金的な余裕のあるAさんが、姉や兄の持ち分を買い取りたいと申し出ましたが、いい返事がもらえませんでした。
この先、どうすればいいか、Aさんが相談に来られました。
共有解消するために、いちばん簡単なのは4人で売却して金銭を4等分することです。しかし、思い出の実家は残せません。
次は共有者が買い取る方法で、たとえば姉や兄がAさんに4分の1ずつを売却してAさんひとりの名義にすることもできます。
姉や兄はまとまった譲渡代金が入りますが、その後の家賃収入は入りませんので、面白くないかもしれません。

◇分けられないので全員で売却が妥当
建物を度外視して、土地自体を4つに割ける方法もありますが、今回のアパートは敷地延長の区画ですので、道路復員が確保できず、選択肢からはずれました。
共有解消はなにかしらの犠牲(土地が残せない、家賃が入らない)が必要になりますが、このまま共有するほうが課題が増えていくため、早めに解決することをお勧めしました。Aさんが買い取る案が受け入れられないというのは、身内だからいい感情にならないということでしょう。
よって、今回の選択肢は「全員で売却」が妥当だと判断されました。
Aさんにもそうしたことを説明して、姉兄にも働きかけていくようにお勧めしました。
しかも、Aさんが言い出すよりは「相続の専門家からの提案」だと説得力があることも説明し、
そうした場を作ってもらう働きかけをしてもらいます。

◆相続コーディネート実務士から◆
相続のとき「分けられないから、とりあえず共有」というごきょうだいは多くあります。
「とりあえず」だとしても「解決策が見えなくなる」ため、安易な共有はお勧めできません。

◆ポイント◆
・共有にするなら、次のルールを決めておく。

・共有の解決は売却が一番の選択肢となる。

 
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