みなさま、こんにちは。相続コーディネート実務士の曽根惠子です。

「相続相談の現場から」として、相談に来られたお客様の事例をご紹介いたします。

今回は50代・女性のTさんが、父親の相続対策のことで相談に来られました。

◇兄が先に亡くなってしまったこのままでは

Tさん(50代・女性)は兄とふたりきょうだいです。

母親が先に亡くなり、父親はしばらくは一人暮らしをしていましたが、

脳こうそくで倒れて入院、そのまま介護施設に入所して生活しています。

Tさんには兄がいますが、兄は家を継ぐつもりはないようで、早々に郷里を離れ、

ほとんど実家に顔を見せることはありませんでした。

兄は会社員でしたが、50歳目前に体調を崩し、検査したところガンと診断され、

わずかな入院期間で亡くなってしまいました。

そんな状況で、他県に嫁いだTさんが必然的に定期的に父親の様子を見に施設へ

通い、父親のサポートをしてきました。亡父の子供が二人いますが、

兄と同様、父親に会いに来ることもなく、まして介護の役割分担などしてくれることもありませんでした。

父親の状態からはいつ相続になっても不思議ではありません。

相続になったときのことも知っておきたいとTさんが相談にこられました。

◇対策しないと相続税は1000万円

父親の財産は自宅と預金、株などですが、建築会社を定年まで勤めて退職金も

あり、母親が亡くなったときに保険も入りましたので、総額1億2000万円ほどの額になりました。

自宅が2000万円、預金が1億円です。

このままでは、1000万円ほどの相続税がかかるため、節税対策をお勧めし、

父親の預金を引き出し、父親名義で、4つの賃貸不動産を購入されました。

そうすることで相続税は125万円と試算され、節税が実現しました。



◇後見人がついて不動産対策を全否定

ところが、その後、銀行の勧めで弁護士が成年後見人となり、

直前の父親の不動産購入は意思能力が低下した父親の意思ではないと提訴。

もとの現金に戻すようにと言ってきたのです。

購入時には司法書士が介護施設まで出向いて意思確認をしているのですが、

それでも弁護士の訴えにより、和解という名目ながら、元に戻すことになったのです。

弁護士は財産を減らさず管理する立場で、節税のためのマンション購入は父親のためには

ならないという判断なのです。立場が違うということですが、後見人は相続人のためには働いてくれないわけで、

贈与も、節税もないということです。

◆相続コーディネート実務士から 

後見人は財産を管理される立場ですので、節税対策は一切しないという現実。

家族円満であれば後見人をつける前に対策を済ませておきたいものです。



◆ポイント 

・後見人は相続人のための節税対策に理解がない

・裁判所は弁護士の主張を優先

 
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