みなさま、こんにちは。相続コーディネート実務士の曽根惠子です。
「相続相談の現場から」として、相談に来られたお客様の事例をご紹介いたします。
今回は50代・女性のAさんの妹、弟が、父親の相続手続きのことで相談に来られました。
◇1人暮しの父親をサポートしてきた
Aさん(50代女性)は3人きょうだいの長女。弟と妹がいます。
3人とも実家を出て独立し、地方の実家は両親が二人暮らしをしてきました。
二人暮らしのうちはとくに問題はなく、Aさんもたまに様子を見に行く程度でしが、
母親のほうが年上の父親よりも先に亡くなってしまったのです。
母親は脳出血で倒れてから、しばらく入院をしていましたが、
家に帰ることはできずに、そのまま病院で亡くなりました。
母親が亡くなったことで、それから父親の一人暮らしが始まりましたが、
それまで家事一切は母親がしていましたので、慣れるまでが大変でした。
Aさんは幸い、地元の人と結婚して、実家の隣町に家を買って住んでいて、車で30分ほどで行けるため、
毎日のように父親の様子を見に行き、サポートしてきました。
その数年後に、やはり父親も心筋梗塞の発作を起こし、倒れて亡くなってしまったのです。
◇葬儀後からギクシャクし始めた
母親が入院した時も、父親の一人暮らしや倒れた時も、弟、妹は遠方にいることを
理由に来ることもなく、Aさんの労をねぎらうような言葉もありません。
葬儀が終わって遺産分割の話になると、きょうだい間の温度差の違いでギクシャクし始めました。
父親の財産は約300万円の自宅と7000万円の預金です。
会社員だった父親は、お給料や退職金を大事に貯めていたようで、不動産よりも預金のほうが多く残っていました。
相続税の改正前に亡くなっているので、相続税の申告は不要です。
弟、妹は、すべてを3等分でと主張しますが、いままで何もしてこなかった二人と
毎日のように父親の面倒を看てきた自分が同等だと言われることが許せません。
さらに、実家の不動産は約300万円という評価だとしても、市道を入った奥にあり、簡単に売れる地域ではないといえます。
弟も妹も家はいらないと言っており、立場上も近くに住むAさんが家を相続し、お墓なども継承していくのが現実的です。
しかし、それを含めて3等分するということは、わずらわしくない現金だけを相続したほうが得策だとなります。
◇弁護士に依頼する一歩手前で踏みとどまる
Aさんからすれば、自分のいままでの寄与分も考慮してくれず、家を含めて3等分だと言われて、
感情的になってしまい、話し合いができなくなりました。
困った弟、妹の二人が当社に相談に来られましたので、何度かAさんの本音を聞くようにしました。
Aさんは弟、妹が困らせてやりたい気持ちにもなり、弁護士に依頼して徹底的に争うことを考えていた時期でしたが、
何度か気持ちをお聞きすることができ、弟、妹にも、歩み寄るようにお勧めしました。
双方から何度かの意見をお聞きし、できあがった分割案は、
「家と寄与分を別枠にしてAさんに、残りは3等分」という内容でした。
Aさんも二人から寄与を認めてもらうことが目的でしたので、
その内容で合意するとなり、弟妹も異論なく、方向性が見えたのでした。
徹底的に争う一歩手前で踏みとどまってもらったことは幸いだったと感じます。
◆相続コーディネート実務士から◆
遺産分割で争って、相手に勝っても、一生悔いが残るものです。
負けたふりして、ちょっと譲ってまとまることが価値あり、なのです。
◆ポイント
・寄与した分を認めることで遺産分割をまとめる
・弁護士に依頼して調停を始めてもいいことはない