みなさま、こんにちは。相続コーディネート実務士の曽根惠子です。
「相続相談の現場から」として、相談に来られたお客様の事例をご紹介いたします。
今回は50代・女性のTさんが、母親の相続のことで相談に来られました。
◇仕事を辞めて母親の介護をした
Tさん(50代・女性)は、先月、母親が亡くなり、妹と2人で相続手続きをすることになりました。
父親は10年前に亡くなっており、そのときは母親が全部を相続しています。
そのときは、母親とTさんの2人で当社に相談に来られましたので、相続手続きのサポートをしています。
父親のときは基礎控除が8000万円あり、自宅と田舎の土地、預貯金でしたので、その範囲内となり、相続税の申告は不要でした。
Tさんは同じ県内、妹は他県に、それぞれ配偶者と子供と一緒に住んでいますので、
母親は10年間、一人暮らしをしてきました。
80歳を過ぎてからは病気がみつかり、入院、手術するなど、家族のサポートが必要になり、
Tさんが仕事を辞めて、病院に通って手助けをしてきました。
今年になって他の病気も見つかり、なかなか家に帰れないうちに亡くなってしまいました。
病院に入院中とはいえ、母親は、要介護1のレベルで、認知的なこともなく、とてもしっかりしていましたので、
本人は死期が近いとは思っていなかったはずとTさんは話されました。
◇戸籍を取って異父姉がいることが判明
母親は、普段から「自分の財産は姉妹2人で仲良く分けて」と言っていました。
姉妹も仲がよく、その言葉は聞いていても、遺言書にはしませんでした。
ところが、相続手続きをしようと母親の戸籍謄本を取って見ると、母親は再婚で
前夫との間に娘が1人いることがわかったのです。
Tさんも、妹も、そんなことは両親や親族から一度も聞いたことがなく、本当に驚いたのです。
姉になる人はTさんより7歳年上ですので、60代半ばです。
Tさんも妹も、この事実を受け入れがたく、とても、自分たちで連絡することはできないということになり、
相談に来られたのです。母親が離婚し、娘は夫が親権を持ち、引き取りましたので、Tさんが思い返しても
会ったことはないと思えるのです。
◇前夫が引き取った娘にも相続権がある
母親は80代で相続の知識もないため、夫が引き取った娘にも自分の相続権が
あるとは思わなかったのでしょう。いつも、「財産はふたりで仲良く分けて」とTさんと妹に言っていました。
母親は、それでよしと思っていたのか、遺言書はありません。
母親の財産は自宅と預金で約2600万円です。相続税の申告は不要ですが、
戸籍上の姉がいる以上は、その人の合意も得なければ手続きができません。
Tさんは妹とも相談し、とにかく、長引かずに円満に手続きを終えたいので、
財産を要求されたら、法定分は分けるようにしたいということでした。
◇ドラマの世界のような現実がある
Tさんに委託を頂いて、司法書士がもう一人の相続人の住民票を取得する
ところから始めるようになります。
その方がどんな育ち方をしたのか、生みの母親の存在を知っていたのか、
父親がどのように聞かされていたのか、などにより、今後の展開は変わると言えます。
けれども、Tさんも妹さんも、財産を分けるつもりはあるということですので、
連絡が取れさえすれば、円満に解決するはずです。
「亡くなってから前夫の娘がいることが発覚するなんて、ドラマの世界かと
思っていたが、まさか、自分がそうした立場になるなんて!」とTさん。
ドラマの世界のように、姉妹がドママテッィクで涙の対面は、なかなか、
現実的にはならないように思います。
◆ 相続コーディネート実務士から ◆
戸籍できょうだいだとなっても、気持ちの整理は難しいものです。
いきなりではなく、最初は専門家に任せたほうが円満でしょう。
◆ポイント
・前夫が引き取った娘にも相続権がある
・司法書士であれば戸籍謄本を取得でき、相続人の住所を特定できる