みなさま、こんにちは。相続コーディネート実務士の曽根惠子です。
「相続相談の現場から」として、相談に来られたお客様の事例をご紹介いたします。
今回は60代・男性のSさんが、遺産分割のことで相談に来られました。
◇遺言書で相続したのに遺留分請求された
Sさん(60代・男性)は、一昨年に母親が亡くなり、遺言書で財産を相続しました。
しかし、その後、姉妹3人から遺留分請求の調停を起こされて、家庭裁判所で4回の調停をしてきました。
姉妹は弁護士を依頼しており、先方の弁護士より遺留分の額を提示されています。
次回に、Sさんがそれに対して回答をしなくてはならないのですが、
その価格が妥当かどうか、アドバイスを受けたいとSさん夫婦が来られました。
◇母親は全財産をSさんに
先に父が亡くなったときは、自筆の遺言書があり、すでに母親と共有名義に自宅は、
父親名義を長男であるAさんが相続して、母親とSさんの共有となりました。
両親とSさん家族は同居して、Sさん夫婦が両親の面倒を見てきました。
結婚して家を離れている姉と妹たちが積極的に手伝ってくれたことはありません。
そうした状況から、母親も遺言書を書いてくれて、母親の財産もSさんがすべてを相続したのです。
◇父親のときには、遺留分請求はされなかったのに
父親のときは、まだ母親が同居しているからなのか、財産の大部分の自宅をSさんが相続しても、
姉妹から遺留分の請求はありませんでした。
ところが、今回の母親の相続で最後だからか、弁護士を入れて遺留分の請求がされたのです。
母親の財産は自宅の土地建物の半分1000万円と預金1000万円です。
弁護士からは1人250万円の遺留分と提示されています。
Sさんの気持ちとすれば、ほとんど面倒を看なかった姉妹に払う額はもっと少なくしたいという心情だというのです。
◇許しがたい気持ちを捨て、譲歩して終わらせる
しかし調停に持ち込めば不動産は「路線価」ではなく、「時価」が一般的です。
不動産を「路線価」評価していることは価格を抑えていることになり、良心的だといえます。
よってSさんにアドバイスしたことは、多少のことであれば譲歩して、
遺留分を払って、早く終わらせたほうが得策、だということです。
ただし、払えるお金がない場合は、分割払いの条件を出すことも可能でしょう。
Sさんの気持ちは、遺留分を請求されたときから許しがたい気持ちになっていて、
少しでも減らしたいということばかりだったようです。
遺言書がなければ、自宅の名義を簡単にAさんにすることはできなかったと言えますので、
母親に感謝し、姉妹にも気持ちよく遺留分を払うことで決着することをお勧めしました。
いつまでも拘っていると多少は減額できたとしても、相手を攻撃する感情が自分にも向かってきますので、
相当なストレスを抱えることは間違いありません。
こうしたアドバイスを聞いて、Sさんは「ほんとうにすっきりした。早めに和解するようにします。
と言って笑顔で帰られました。姉妹側の請求が良心的なこともわかり、納得されたようでした。
◆相続コーディネート実務士から
調停に関わるストレスは相当なもので、長引くほど体にダメージを受けます。
争い事から早く離れることが大事
◆ポイント
・調停の不動産評価で「路線価」は良心的
・許しがたい気持ちを捨てて譲歩して早く終わらせることも必要