みなさま、こんにちは。相続コーディネート実務士の曽根惠子です。
「相続相談の現場から」として、相談に来られたお客様の事例をご紹介いたします。
今回は 40代女性のKさんが、父親の相続のことで相談に来られました。
◇父親が介護施設に
Kさんの父親は80代半ば。母親は8年前に他界して一人暮しをしていました。
ところが、父親は数年前にくも膜下出血を起こしてから半身付随となってしまい、介護施設に入所しています。
Kさんは3人きょうだいの一番下で、兄と姉がいます。
兄は父親の土地を借りてクリニックを開業しており、その土地を相続することは全員が合意をしています。
姉とKさんは独身で、二人とも実家を離れて仕事中心の生活をしてきましたが、
Kさんは最近の姉の行動に不信感を持つようになりました。
◇母親のとき姉に有利な相続だった
もとはといえば、7年前に母親が亡くなったときのことが原因だといえます。
母親には、祖父から相続した賃貸マンションがあり、
父親名義の実家や兄が使うクリニックの土地よりも立地のいいところにあり、評価が高いのです。
母親が亡くなった時、相続の手続きは、父親が中心に行いましたが、なぜか姉に
有利な形になり、一番価値のある賃貸マンションの土地は、父親ではなく、姉が相続しました。
Aさんは、実家から離れたところにある土地を相続していますが、
行ったこともないところで、現在も空き地のままにしてあります。
現在の住まいからも遠く、将来、家を建てて住むという展望もありません。
姉が相続した賃貸マンションの評価額は、Aさんが相続した土地の10倍以上で、
毎月家賃も入りましたが、Aさんの土地は収入がないだけでなく、固定資産税と草刈代が出費となります。
同じ姉妹なのに、これだけの違いがあると、あとから知ったのでした。
◇重要書類は姉が管理している
また、姉は最近、毎週のように父親の施設に通い詰めていることがわかり、
母親の相続のように、姉に画策されるのではないかと、Kさんが1人で相談に来られました。
父親の通帳などの重要書類は空き家となっている実家にはなく、おそらく、姉が保管していると思われるため、
今から、銀行口座やクレジットカードの状況を確認する方法があるか知りたいということでした。
父親は年齢的なところから、認知気味であり、印鑑カードや保険証なども姉が管理をしていて、
いちばん近くに住む兄にも預けていません。
本来は長男で、一番近くに住む兄が、公平な立場で財産管理をすれば収まるところでしょうが、
仕事が忙しく、こうしたことには消極的で、積極的な姉に任せたほうが楽という態度で、頼りにできません。
◇公平な遺産分割を目指す
Kさんが一番許せないと思えるのは、いいとこどりをしている姉なのに、妹とは仲がよくて、
何の問題もないと親戚など周辺に言っていることだそう。姉はまったくKさんの心情を汲んでいる様子はありません。
そこでアドバイスしたことは、すぐにでも、これからのサポート体制や財産内容をきょうだいで確認し、
共有しておくことをお勧めしました。
生前ですので、本人か本人の委任状により、取引の確認をしておくようにします。
さらに、もめないために、母親のときの遺産分割も含めて公平な遺産分割案を作り、
父親に公正証書遺言を作ってもらうことが望ましいと言えます。
この対策がうまく進まない場合は、財産管理を主目的とするため、父親に後見人を
立てることも検討するようにアドバイスしました。
◇姉妹でも別にする
助け合うことが姉妹の理想形なのに、現実は、いちばん酷な現状を
突きつけて谷底に落としているのだと感じます。
まだ数十年はあると思われる人生ですので、賢く対処し、争わずに自分を守るため、
姉妹でも別、という立ち位置を確保するような決断が必要でしょう。
◆ 相続コーディネート実務士から ◆
きょうだいとは争いたくないのが人情ながら、不満や不信感を抱えて、何十年も仲良くできないのも事実。
自分が納得できるところで決断したいですね。
◆ポイント
・両親合わせた財産で公平な遺産分割も必要
・きょうだいでも別の財産になるようにする