みなさま、こんにちは。相続コーディネート実務士の曽根惠子です。
「相続相談の現場から」として、相談に来られたお客様の事例をご紹介いたします。
今回は60代のAさんが、父親が亡くなり、相続税申告や遺産分割のことで相談に来られました。
◇二世帯住宅にして長女が同居
Aさん(60代・男性)は、今年の1月に父親(80代)が亡くなり、母親(80代)ときょうだい(長女・長男・次女)
3人で相続をすることになりました。
父親は遺言書を残しませんでしたので、分割協議をしなければなりませんが、
長女が暴走気味だと、相談に来られました。
父親は先代から相続した土地を活かして貸し店舗とアパートを建て、賃貸事業を行ってきました。
自宅は同じ敷地の裏にあります。
長男のAさんは同居をしておらず、長女、次女も嫁いで、両親は2人暮らしをしてきましたが、
自宅が古くなって建て替えるとき、夫を亡くしていた長女と孫が一緒のほうが安心だと、二世帯住宅を建てました。
建物の名義は父親が70%、長女30%です。
数年前、父親が骨折して車イスになってからは自宅で生活する事が困難になり、
そのときに、両親とも介護付きの高齢者住宅に住むようになりました。
◇両親の家は賃貸、長女が管理
すると長女は、両親が住んでいた1階が空き家になったことから、賃貸して家賃を自分で受け取るようになりました。
二世帯住宅でも、1階と2階は独立していますので、他人に貸すことができるようになっているのです。
そうして長女は両親の家を賃貸し、その上に、同じ敷地にある貸し店舗とアパートについても自分で家賃を預かると
言いだしました。Aさんは、それを牽制するために貸店舗とアパートは自分で管理をするようにしたのです。
なぜなら、家賃収入は両親の介護費用として必要ですし、長女に預けてしまうと両親のためではなく、
自分のものにしてしまうのではという不安がありました。
◇同じ敷地に住むから不動産を相続するという主張!
父親が亡くなったとき長女は、「同じ敷地に住んで管理を担ってきた自分が全部の不動産を相続するのは当然」
と発言したのです。あまりに自分中心なので、母親もAさんたちきょうだいも、怒り心頭になりました。
父親の財産の額は1億3000万円程度で、相続税の申告が必要ですが、母親が相続すれば納税は扶養できます。
しかし、家賃収入に固執する長女が納得しないことは目に見えています。
母親は長女よりも次女のほうがかわいいらしく、長女が住む家は次女にあげたいという始末。
このままでは、更に対立してしまうかもしれません。
◇長女の気持ちを尊重して分割を提案
そこで、今回は家賃にこだわる長女に配慮した分割とし、長女が住む家と駐車場を
分筆してあげてしまうことを提案しました。
今後、長女と一緒に意思決定がしにくいと思われるため、切り離す提案をしました。
残りを母親が相続し、相続税を節税した上で、公正証書遺言にてAさんと次女が
相続できるようにしてもらうストーリーてす。
対立する相手の主張を受け容れて、ほどよい分割案になるような配慮が必要です。
責めたい気持ちはぐっと我慢して、歩み寄れる気持ちを引き出したいところです。
◆ 相続コーディネート実務士から
相手を許し難いという気持ちが優先しても、ぐっと我慢することが必要でしょう。
責めてしまうと火に油。責めたら負け、だということになります。
◆ポイント
遺産分割でもめると配偶者の特例も使えないため、合意が得られる案が必要
責めて悪感情を引き出さないように我慢も必要