みなさま、こんにちは。相続コーディネート実務士の曽根惠子です。
「相続相談の現場から」として、相談に来られたお客様の事例をご紹介いたします。
今回は50代のМさんが妹と2人で、母親の財産の分け方をどうすればいいかと相談に来られました。
〇 母親は有料老人ホームに住み替え
Mさん(50代・女性)の 母親は80代半ばです。父親は15年前に亡くなりました。
そのときは母親と妹と相談して、相続税の負担がないようにするため、父親の全財産を母親が相続しました。
財産は1億円ほどで、ほとんどは自宅の土地が90%を占めています。
自宅の半分は父親が開業していた医院で、あとを継ぐ人がないため、使われていない状況でした。
Mさんも、妹も、結婚して別のところで暮らしているため、父親が亡くなった後、
母親は一人暮しをしていましたが、広い自宅での1人暮しは不安だと言って、
有料老人ホームを探して住み替えしました。
〇隣地から協力を得られず、売却は断念した
Mさんと妹はそれぞれ嫁いでいるため、実家に戻って生活することはありません。
そうなると空き家の自宅は維持しにくいため、売却して、ホームの費用に充てようと考えました。
母親も説得して、売却の準備を始めたのですが、隣接地の所有者から境界確認の立ち合いや承諾書に
ハンコがもらえません。
隣地との境界確認がないとトラブルのリスクもあるため、通常の価格よりも低くなることがあります。
そのため、Mさん家族も売却は断念しました。
〇自宅から賃貸住宅に建て替えて収入の不安は解消
自宅の半分は父親が医院に使用していましたので、そのままリフォームして貸すには適していません。
そこで、古い建物は解体し、母親名義で、賃貸住宅に建てかえて収入を得るようにしました。
母親は70代後半で、自ら動くタイプではありません。
Mさんと妹が協力して建築会社と打ち合わせをし、銀行融資も取り付けて、すべての段取りをしました。
借入は約1億円で、毎月家賃収入が100万円あり、建築費の返済をしても半分程度50万円ほどは手元に残ります。
その収入が入る事で、母親の老人ホームの生活費がまかなえていますので、
空き家のままにしなくてよかったとМさんと妹は、納得しておられます。
〇母親の相続はどうする?
母親は老人ホームで転倒して骨折してしまい、要介護となりました。
そのため、有料老人ホームから介護サポートがある老人ホームに入所しています。
毎月22万円の費用がかかりますが、現在は家賃収入から。
この先の相続のときは、どうすればいいか、考えておきたいとMさんと妹の2人で相談に来られたのです。
母親は自分の相続のことは考えたくないようで、なかなか相続や遺言書のことは言い出しにくい雰囲気ですが、
このまま相続になると分けにくい財産ですので、いまから選択肢を検討しておくことをお勧めしました。
〇相続では分けることを考える その1今から売却
2人で共有することきは課題となるため、お勧めできません。やはり、分ける事を考えておくことが必要です。
1つだから分けられないため、今から売却して現金にしておくか、
2つの不動産に買い替えする方法が選択肢となります。
母親のアパートは築10年で、まだ新しく、現在は満室ですので、売却しやすい条件が整っています。
持ち続ければ建物の価値は下がるため、早めに売却して、
いまからわけやすく2つの区分マンションなどに分けておくようにします。
〇相続では分けることを考える その2どちらかが引き受けて代償金を払う
どうしても親の土地を残したい場合は、どちらかが引き受けて、もう1人には代償金を払う方法もあります。
売却と違い、譲渡税などの負担がない分財産が目減りすることはなく、
別々の財産となりますので、将来のトラブルはありません。
しかし、不動産評価大きいため、代償金もかなりの額となり、まとまった現金がない場合は、
金融機関から借り入れする必要も出てくるかもしれません。
今から計画的に貯めておくか、生命保険などで用意する必要があります。
◆相続コーディネーターから
財産が一棟の賃貸部分が大部分、それに見合う現金がないのに、子供もが2人となると分けにくい財産の典型です。
同じ形で持ち続けるという固定観念から離れて、売却して分けることも必要です。
◆ポイント
・きょうだいで不動産の共有はしないほうがトラブルになりにくい
・築浅、満室で、条件がいいときに思い切って売却、買い替えしておく
・一人が不動産を相続すれば、他には代償金としてお金を払う分け方もある