みなさま、こんにちは。相続コーディネート実務士の曽根惠子です。
今回は、事業用小規模宅地等の特例を適用して相続税を1,178万円節税できた田中さんのお話です。
■節税額の合計 節税額1,178万円 評価減 3,927万円
■節税項目 [遺産分割]事業用小規模宅地等特例
[評価・申告]
[納税]
[相続データ]
・依頼者 田中さん(40代女性)・職業 飲食店経営者
・被相続人 父親
・相続人 長女50代、次女50代、三女50代
・家系図 別途
・財産内容 自宅、店舗兼会社、賃貸マンション、現金等
・遺言 なし
[相続税の節税額]
相続財産 2億4,966万円
債務、葬式費用 △ 709万円
◆特定事業用小規模宅地の減額 △ 3,056万円(222.85㎡ 80%適用)
◆賃貸事業用小規模宅地の減額 △ 87万円 (88.57㎡ 50%適用)
課税価格 2億330万円
基礎控除(相続人3人) 4,800万円
相続税総額 2,559万円
納付した相続税 2,559万円②
当初の相続税額 3,737万円①
◆節税額 1,178万円①-②
・評価減できた項目と節税額・・・添付グラフ
1.特定事業用小規模宅地等の特例の評価減
→同族会社事業用地にて適用 ・・・ 評価減3,056万円
2.賃貸事業用小規模宅地等の特例の評価減
→貸付事業用地にて適用 ・・・ 評価減871万円
・節税ポイント
1、小規模宅地等の特例
→長女が相続した特定同族会社事業用の土地に適用・・・評価減3,065万円
→三女が相続した貸付事業用の土地に適用・・・評価減871万円
□相続の状況
田中さんの父親は、飲食店で修行をした後、独立し、結婚後は夫婦でお店を切り盛りしてきました。
田中さんを長女とする3人の娘も、子供の頃から両親の働く姿を見て育ってきたので、
両親を支える気持ちで、自然と店を手伝うようになりました。
バブル経済の最中は、店の経営も順調で、3店舗を経営するようになり、順風満帆かと思えましたが、
父親とともにお店を切り盛りしてきた母親が先に他界してしまったのです。
それを機として、父親は店舗の経営を娘に任せることを決断し、贈与税の負担にならない範囲で、
単独に運営できるように店舗の土地、建物を3人に一つずつ贈与しました。
飲食店はそれぞれが経営できるように分けましたので、相続の準備はできていたのですが、
それでも自宅と会社、長女のお店は父親の名義が残っており、相続税がかかる財産です。
両親が苦労して築いてきた財産なので、できるだけ節税して、父親から引き継いだ飲食店を
継続していきたいというのが田中さん姉妹の希望です。
□課題
・遺言がなく、遺産分割協議が必要
・会社と店舗は長女が使用しており、一番評価が高い
・相続人は3人だが、不動産は2カ所で分けにくい
□提案
田中さんの父親は会社の株を所有していましたので、同族会社の事業用地は小規模宅地等の特例による
評価減が適用できます。田中さんの父親の財産において、一番大きな評価減になることは
その特例を生かすことでした。
しかし、その不動産が財産の半分を占めており、3等分にはなりませんが、
特例を適用すれば全員の相続税も下げられるメリットが生まれます。幸い、預金が多くあり、
長女には自宅と店舗の不動産の他に納税分の預金とし、次女はマンションと預金、
三女は預金という形が等分になるような分け方をしました。
この案で3人が合意され、円満に遺産分割協議も終えることができ、節税ができました。
不動産があると等分には分けられないため、互いに譲歩してまとまったのでした。