(春日部駅からクレヨンしんちゃんの看板を目にすることができる。 撮影:編集部)

今年のゴールデンウィーク、予定はもう決めましたか?

4月15日(土)に公開される映画クレヨンしんちゃんの最新作「襲来!! 宇宙人シリリ」では、クレヨンしんちゃんのご一家「野原家」がニッポン縦断の旅に出ます。野原家に宇宙人“シリリ”が突然やってきて、謎のビームによりひろしとみさえがこどもの姿に!
大人に戻るためこども野原一家は宇宙人シリリをしんのすけのシリに隠し、ニッポン全国で大暴れする!という内容です。

野原家は埼玉県春日部市の庭付き戸建てに住み、マイカーを所持しています。妻は専業主婦、子供は2人。これだけ聞くと結構、裕福だと思いませんか?今回上映される作品では家族で日本縦断旅行。時間の面でも、お金の面でも、そう易々とできることではありません。そこで今回は、野原家の大黒柱:野原ひろしの年収をマイホーム購入資金から予測してみることにします。

設定の確認

クレヨンしんちゃんの連載開始は1990年(平成2年)。
時代はバブル崩壊直前です。バブル期における不動産価格の高騰を受け、この年、国が土地関連融資の抑制策を打ち出しました。また、資本市場の過熱感を抑えるために急激な金融引き締め策を実施し、株式市場では一足先に本格的な株価の暴落が始まった年でもあります。設定では、すでにこの年、野原家の住宅ローンの残り返済年数が32年となっているので、35年の住宅ローンを組んでいると仮定した場合、野原家では1987年にマイホームを購入したことになります。

バブル絶頂期ですね。
ストーリーでは、せっかく購入したマイホームが爆発したため、一時的に「またずれ荘」というアパートに仮住まいをし、火災保険の保険金でローンの残債を返済しているとなっています。今住んでいる一戸建て住宅は、中古で購入したということですので、ご近所に迷惑をかけたので別の場所に引っ越し、中古の土地付き一戸建て住宅を購入したということになるでしょうか。

初期設定では35年の住宅ローンを組んでいるので、同様に35年の住宅ローンを組んで中古住宅を購入したとします。住所は埼玉県春日部市。春日部駅から徒歩10分の場所にお住まいのようです。延床面積や敷地面積については不明ですが、2015年4月24日に取り上げられたマイナビニュースの特別企画「知られざる間取りも大公開! クレヨンしんちゃんの野原家のお引っ越し料金を見積もった」で提示されている間取りを参考にすると、庭と駐車場があり、1階が和室1部屋(リビング)・和室1部屋(客間)とダイニングキッチン、2階が洋室2部屋、いわゆる3LDKとなっています。お住まいとしては少し手狭な印象ですので、延床面積を75㎡、敷地面積を110㎡としましょう。

 設定条件)
 ・埼玉県春日部市在住(春日部駅から徒歩10分ということで、地区は中央に設定)
 ・世帯主(野原ひろし:35歳)の職業は商社勤務(係長)
 ・家族構成は、夫:会社員、妻:専業主婦、子ども2人(5歳と0歳)
 ・1990年に土地付き中古住宅を購入し、35年の住宅ローンを組む
 ・物件の面積は、延床面積:75㎡、敷地面積:110㎡

(春日部駅の各路線間にも看板が設置されている。 撮影:編集部

物件の購入価格はいくらか

さて、物件価格がいくらぐらいの中古住宅を購入したのかを想定します。とりあえず、1990年当時の埼玉県春日部市の公示価格を見てみましょう。
「地価公示価格チェッカー」という便利なサイトがあります。都道府県の市町村別に公示価格の平均値の推移を確認できるサイトですが、1990年当時、埼玉県春日部市の公示価格の平均値は、「110.2万円/坪、33.3万円/㎡」となっています。設定した条件をもとに公示価格ベースで野原家の購入した土地代を算出すると3,663万円になります。

発表されたばかりですが、2017年3月の埼玉県春日部市の公示価格の平均値が「32.2万円/坪、9.7万円/㎡」となっているので、今と比べると約3.43倍の金額です。埼玉県春日部市中央の最新の公示価格は13.7万円/㎡ですので、この値をもとに計算すると、1990年当時の土地代はおおよそ5,169万円になります。

公示価格を基準に考えると1990年当時と2017年とではこのような違いがありますが、不動産を売買する際は、公示価格ではなく「取引価格(いわゆる実勢価格)」を参考にします。公示価格は取引価格の約90%の金額になるので、当時の取引価格を推定し計算すると、土地代は約5,743万円になります。土地代だけでも6,000万円近くもしたんですね。

恐るべし、バブル経済。
春日部市という東京に近い立地というのもあるのでしょう。

次に建物の金額について考えていきましょう。
中古住宅を購入したので、建物の金額は新築よりは安くなります。ただ、築何年の物件なのかが不明なので、あえて築10年としましょう。仮に新築で購入した場合の金額が2,000万円だったとして、10年経過後の住宅の価値が1,000万円に目減りしていたとします。この金額を中古住宅の購入費用とした場合、土地:5,743万円、建物1,000万円となり、土地・建物の購入費用の合計額は6,743万円となります。諸経費等を含めるともう少し多くなるので、購入費用の総額を約7,000万円として考えます。

続いて住宅ローンです。
頭金を500万円とし、残りを返済期間35年の住宅ローンで借り入れたと仮定します。1990年当時は、今では当たり前になった「フラット35」という商品がありませんでした。住宅金融金庫の固定金利のピークも1990年でしたが、ピーク時の金利が5.5%。元利均等返済で、年2回のボーナス時の返済割合を40%と設定します。この条件のもと、仮にフラット35が当時もあったと仮定してフラット35のサイトで総返済額を計算すると14,683万円。

毎月の返済額が21万円、ボーナス時の返済額が84.1万円になります。

えっ、こんなに毎月ローン返済してるの?
バブル期のピークで商社にお勤めの35歳係長。
相当、年収も多かったんだろうと推察されます。

野原ひろしの年収は?

それではいよいよ、野原家の大黒柱、野原ひろしさんの年収を試算してみましょう。原則、毎年の住宅ローン返済額は年収の25%以内です。上記の月返済額21万円をもとに野原ひろしさんの年収を計算すると1,008万円。クレヨンしんちゃんのお父さんは、実は1,000万プレーヤーだったんですね。

バブルの頃ってすごいなぁ。
というより、デフレ経済のもと、野原家はどうなっているんでしょう。そっちの方が気になるところです。

 
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