健康長寿時代、これからの不動産との関わり方について連載しています。
今回は5回目ということで、子育て世帯にとって、マイホームを購入するポイントがどのようなものなのかを整理してみます。
まずは、「暮らしのイメージ」から。
いざ、夢のマイホームを買うというお話になった場合、どこから手を付けていけばいいのか意外と迷ってしまいます。
一戸建てがいいのか、マンションがいいのか。
持ち家がいいのか、賃貸がいいのか。
駅から近いのがいいのか。
子どもの教育環境を考えると・・・。
会社までの通勤はどうするのか・・・。
など、一度考え出すと、結構、切りがありません。
このように、ぼわぁ~っと頭の中が想像の洪水になる前に住まいについての「軸」を決めるようにしましょう。
つまり、何を中心に住まいについて考えていくのかです。
たとえば、家族を中心に考えるとします。
頭の中の項目は3つほど。
①家族の生活環境
②子どもの成長
③老後の暮らし
①家族の生活環境と②子どもの成長は、これまでも当たり前に言われてきていることですし、なんとなくイメージできます。
①家族の生活環境
・駅に比較的近く、買物も手軽にでき、移動にも困らない。
・病院も近くにあり、公園も周りにはあって、人の賑わいもある。
・お勤め先からはほどほどの距離で、都心と自然の両方にアクセスしやすい。
・それと、同世代の子育て世帯が多そう。
・自治体の行政サービスも充実している。
②子どもの成長
・家から徒歩何分以内に幼稚園や小学校、中学校があるのか。
・学校の教育水準はどうなのか。
・塾や習い事の環境はどうなのか。
・自然に恵まれているのか。
・子どもが遊ぶ公園はどのような感じなのか。
・安全面や防犯はどうなのか。
他にもいろいろとイメージできるかと思いますが、家族を中心に考えていくと、このようにまとまりやすくなります。
ただ、昔と今とで違う点は、③老後の暮らしについても考えておく必要があることです。
高齢化社会とはすなわち、健康長寿時代のこと。
60歳ぐらいにはすでにお子さんも巣立ち、その後、夫婦ふたりの生活になっていきます。
何歳まで生きるのかは人それぞれですが、平均寿命が男性:約80歳、女性:約86歳の今、子どもが独立した後の人生は、その時にならないと実感しないものですが、思っている以上に長いものです。
ましてや、医療技術の進歩により今後も寿命が延びると言われていることを前提に考えると、退職後の生活だけでなく「老後の住まい」のあり方についても、おぼろげにイメージしておく必要があるのが昔と今の最大の違いです。
③老後の暮らし(今の家をどうするのか)
・売却して、手狭な家に引っ越すのか。
・リフォームするのか、建替えするのか。
・リノベーションをし、誰かに貸して、自分たちは引っ越すのか。
・子や孫とともに二世帯住宅で暮らすのか。
・地方に移住するのか。
・海外に移住するのか。
・リバースモーゲージとして活用するのか。
高齢化社会の問題は、高齢者の住まいと密接に関わっていますが、都市計画にも影響を及ぼすようになっています。
最近では、アクティブシニアという元気な高齢者を意味する言葉がありますが、アクティブシニアのライフステージを過ぎると、今度は逆に、動けないご老人がよりクローズアップされてきます。
人が老齢期に入ると日常生活の移動範囲が限られてくるので、最近では、都市計画においても駅を中心にした住まいづくりに変えていこうという動きが見られ始めています。
よく言われることですが、子どもが小さいうちはマンションに住み、子どもが少し大きくなってくると一戸建てに移り、子どもの手が離れると手狭な住まいに引っ越す。
移動手段である自動車の利用も老齢期の方にとっては難しくなるので、町全体、つまり、住まいのあり方そのものがコンパクトにならざるを得なくなってきます。
健康長寿時代、これからの子育て世帯にとって住まいを考えるうえでは、実を言うと、この時代背景を想定しておくことが最も重要です。
これらを見越したうえで、どこに住むのか、いくらぐらいの住宅を購入するのかを決めていくことが求められます。
よくマイホームを購入するのがいいのか、賃貸がいいのかという議論がありますが、今後は、このような時代背景のもと、生涯に使えるお金に着目した場合、「購入vs賃貸」の議論に今までとは違った答えが出てくるのかもしれません。