『健康長寿時代』をテーマに不動産と僕らの人生について連載しています。
第1回・第2回は「高齢化社会における国の政策や人々の価値観の変化が、これからの不動産(住まい)のあり方を変えてきている」というお話をしました。今回からはしばらく、ライフステージに合わせた不動産(住まい)との付き合い方について考えていきたいと思います。
その前に「ライフステージ」と「ライフプラン」の違いについて説明します。
ライフステージとは、“人生の各時期”のこと。
シングル(独身)期、結婚(新婚)期、子育て(出産・育児・養育・教育)期、退職準備(子どもの独立後)期、退職(リタイア)期、エンディング(終活)期などに分類されます。
一方、ライフプランは“人生設計”と訳されます。
これらのライフステージを未来に向けて予測する、生き方の計画書のことです。
未来予想図なんて呼ぶ人もいますね。
さて、これから来る健康長寿時代。
国民が長生きするという前提のもと、国の政策が決められるようになっています。
ということは、私たち個人の人生設計(ライフプラン)もしかり、意識する、しないにかかわらず、高齢化社会=健康長寿社会を前提に考えていくことになります。
厚労省のデータによると、2015年の男性の平均寿命は80.79歳、女性は87.05歳。
この年齢をもとにライフプランを立てていくと仮定した場合、これから子育てをする、もしくはすでに子育て中の世帯にとっては、ものすごく長い人生設計を描いていくことになるでしょう。
子どもが産まれると、今住んでいるアパートが手狭になる。
子どもの成長を考えて、一戸建ての家を買おう。
子どもの教育環境も整えたいので、もう少し広い家に住みたい。
家族をより意識すると、往々にしてこのように考えるのが親心です。
ライフステージでは「子育て期」に当たりますが、今の子育て世帯にとっては、家を買うという経済的なハードルが昔に比べ上がっています。
年収は10年前よりも100万円ほど減り、退職金も大企業・中小企業ともに500万円ほど少なくなっています。
企業が設定している賃金体系が変更され、長引くデフレにもかかわらず、子どもの教育資金はなぜか減らずに高止まり。
ひいては、退職後の年金支給開始年齢を70歳からにしようという議論まで出ている始末です。
子育て世帯は、このような社会的・経済的背景のもと、これから長い人生を生きていくことになります。
ライフプラン(人生設計)を組み立てる際は、次の4つについて少し多めに考えておくようにしましょう。
①働き方や収入が今後、どのように変化するのか。
②子どもの教育資金をどのように準備するのか。
③家族の住まいについてどのように考えるのか。
④老後の生活をどのように成り立たせるのか。
おぼろげでもいいと思います。
未来の予測なんて誰にもできないので。
ただはっきりしていることは、昔の価値観で考えてしまうと、うっかり間違いを起こす可能性が高まるということです。
特に、不動産(住まい)の購入については。
○いくらぐらいまでの住宅ローンなら組めるのか
→収入や支出、貯蓄などを網羅した「キャッシュフロー・シミュレーション(=資金計画)」を立てたうえで検討しましょう。
※銀行が提示する返済計画表ではなく、人生設計の中での資金計画のことです。
○どのような家族像のもと、どのような家に住まうのか
→新築・中古・戸建・マンション・賃貸など、家族に合った住まいのカタチを検討しましょう。
○子どもの成長・教育環境をどのように整えるのか
→どのように子どもを育てたいのかを中心に、子どもの精神的な発育についても考慮するようにしましょう。
これらの点については、今までよりも少し多めに検討しておきましょう。
ここまでは「入口」=購入の話です。
次は「出口」=住み続け、手放すまでのことも想定しておきます。
○夫が転勤する場合、どうするのか。
○被災した場合、どうするのか。
○急激な経済環境の悪化で住宅ローンが支払えなくなった場合、どうするのか。
○夫婦の離婚の際はどうするのか。
○子どもが独立した後はどうするのか。
○マイホームのメンテナンスはどうするのか。
○老後の夫婦の住まいはどうするのか。
○介護が必要になった場合はどうするのか。
○死亡後の財産相続はどうするのか。
○空き家にならないようにするにはどうするのか。
いきなり全部考えようとすると家を買いたくなくなるのでカチッと考える必要はありませんが、不測の事態が起こった際については考えておくようにしましょう。
家を買うということは、本来、このようなことも考えておくということですが、ここまで考えなくても許されていた時代がこれまで長く続いていました。
かといって、今の子育て世帯の人たちが不幸ということではありません。
むしろ、これだけのことに思いを巡らすことができるからこそ、家族について、そのあり方に気を配りやすくなったという点で幸福度の高い時代に入ったと、個人的には感じています。