前回は、「高齢化社会を原因に国の制度が変わりつつあり、結果として、私たちの住まいについての考え方も見直されようとしている」という内容をお伝えしました。
“健康長寿時代”不動産と僕らの人生 ①この国の内政は、すべてあるキーワードでつながっている。今回は、「幸せのカタチ」をキーワードに、これからの生き方と不動産(住まい)との関わり方がどのように変化していくのかについて言及していこうと思います。
1.これまでの人生観とこれからの人生観
2.人生観の変化にともなう不動産(住まい)に対する考え方の変化
幸せのカタチ。
戦後、高度経済成長期を経験してきた日本人が出した幸せへの答えは「経済的な豊かさを得る」ことでした。
良い教育を受ける、良い会社に就職する、定年まで会社で勤め上げる、夢のマイホームを買う、老後は退職金などをもとに豊かな暮らしを送る。
これらは、戦後の貧しさの中から国民の生活レベルを上げ、国を富ますという国策にもとづいた結果です。
所得倍増や核家族などは、それらを物語る象徴的な言葉と言えるでしょう。
そして、時代はバブル経済の崩壊を経て高齢化社会に。
年功序列・終身雇用という、会社が社員の人生の面倒を見てくれる時代は終わりました。
今や、会社に入る目的は変わり、得られる生涯賃金が変わり、子どもの教育や家族の住まい、夫婦の老後にいたるまで、様々な方面で社会的な枠組みが見直されるようになっています。
学生生活が終わり、社会に出ようという時期、これから自分の人生をどのように組み立てていこうか悩むこともあるでしょう。
結婚し、子どもが産まれ、自分たちの家族とどのように幸せな人生を歩んでいこうか考えることもあるでしょう。
転職するのか、退職するのか、老後の人生も含めて考えた場合、残りの人生をどのように過ごすかに想いを巡らすこともあるでしょう。
ライフプラン(人生設計)のもと、これからどのように人生を送っていこうか考えるシーンが今まで以上に増えてくる時代になっています。
これを不動産(住まい)と絡めて考えると、こんな答えが浮かび上がってきます。
これからの住まいは、国策のもと、「入口」だけでなく「出口」についても考える必要が出てきている。
夢のマイホームというと、つい「こんな家がいい」、「住宅ローンはいくらぐらい借りようか」、「学校やスーパーなど暮らしやすいところに住みたい」など、購入時の項目に目が移りがちです。
このようなことを考えるのは至極当然のことですが、今、国は、高齢化社会で浮かび上がっている不動産を巡る諸問題を解決するために、不動産(住まい)についての日本人の価値観を変える取り組みを積極的に行おうとしています。
ベースにあるのは「人生観」=「幸せに対する価値観」の変革です。
健康長寿時代、人は長く生きるようになります。
人が長く生きるような社会では、人の住まう期間もその分長くなります。
一所懸命、頑張って働いて買った夢のマイホーム。
退職後、リフォームや建て替えを行い、これからここをセカンドライフの棲み家として準備したちょっと後の話。
足・腰が弱くなり、介護が必要になるかもしれない、バリアフリーや手すりなど、高齢者に合わせた住まいにリフォームしていこう。
我が子にどのようにしてマイホームを遺していくべきか、相続についても考えていこう。
相続が終わった後は、空き家になった実家をどのように扱っていくのか、新たな問題を解決していこう。
買った家のその後について、これからもっといろいろと考えていこうと国は動き出しています。
高度経済成長期、国策によって醸成された「住まいへの価値観」は、夢だったマイホームに手が届くという「入口」の幸せを満たした後に、私たち日本人が導き出した答えです。
そして今、私たちは、マイホームを買うというかつての夢から目覚め、「出口」をどうするのかという現実的な問題に直面しています。
幸せとは何か。
マイホームを夢見て「入口」だけを考えておけばいい時代は終わりました。
それよりもむしろ、せっかく買った家をどのように大切に使い、どのように次世代に引き継いでいくのか。
「出口」までしっかりと考えていく方向に国は舵を切りました。