老後は何歳からなのか。
2017年の年明け早々、アナウンサーのある言葉が私の夕食の手を止めました。
“高齢者の定義を75歳以上に”
これは日本老年学会の提言ですが、「現在、高齢者と定義されている65歳以上の方は昔と比べ健康で、積極的になんらかの社会活動を行っている方が多いため、65歳以上を高齢者と定義づけるのは必ずしも適切とは言えない」というものです。
確かに今、65歳以上の人たちは元気な方が多いと思います。
お住まいの地域で花植えや町おこしのイベントなどボランティア活動を行っている方を見ていると、昔のような“おじいちゃん・おばあちゃん”のイメージではなくなってきていることに気づきます。
厚生労働省の発表によると、2015年の日本人の平均寿命は、男性が80.79歳、女性が87.05歳。
このような長寿国になりえたのも、戦後、日本が経済成長を遂げ、豊かな経済力と医療技術の進歩を実現できた証しと言えるでしょう。
すなわち長寿は「高齢化社会」を意味し、この国の人々にさまざまな問題を提起しています。
高齢者から子育て世帯へ財産を移転させよう。
自分に合ったお葬式を、家族に負担のかからないお墓を考えていこう。
年金の支給開始年齢を引き上げよう。
定年退職しても働こう、社会活動に参加しよう。
退職年齢を引き上げよう。
働き方を変えていこう、賃金体系を変えていこう。
子育てしやすい労働環境を整えよう。
若者が結婚しやすい環境を生み出していこう。
高齢化という社会現象が国の政策を左右し、法律を変え、制度を変更させ、企業の経済活動にまで深く影響を及ぼすようになりました。
もちろん、私たちの暮らしも例外ではありません。
良い学校を出て、良い会社に就職し、その会社で一生働き続けるという人生設計(ライフプラン)はすでに崩壊しました。
結婚して家族ができ、マイホームを購入し、退職後は孫の顔を見ながら悠々自適な生活を送るという幸せな人生像を思い描く若者も以前と比べ減っています。
30代、家を買う。
⇒30代にとって、マイホームを購入することは、親世代のように夢の話でなくなりつつあります。
40代、住宅ローンを借り換える。
⇒40代にとって、子どもの教育資金を準備しながら住宅ローンを返済するのは、かつてより難しくなりました。
50代、住み方を考える。
⇒50代にとって、老後の生活に向けて、今、住んでいる家をどのようにすべきか考える選択肢が増えました。
マイホームを買う前に、買った後のこともしっかりと考えておけば良かった…。
このような後悔が目立ち始めています。
“後悔先に立たず”ですので「いまさらそんなこと言われても」ですが、「高齢化社会」というキーワードがこの国の内政のすべてに関わっている以上、これからどのように不動産と関わっていけばよいのか、事前にしっかりと考えておく必要があります。
◇マイホームの購入なのか、賃貸なのか。
◇家族に合ったマイホームとは何か。
◇マイホームのメンテナンスはどうするのか。
◇いつまでに住宅ローンを払い終えるのか。
◇退職後は、住み替えなのか、建替えなのか。
いまさら変えられない価値観ですが、今だからこそ時代に合った考え方に見直していくことが大切です。
30代、40代、50代、60代、それぞれの世代で「これから不動産とどう関わっていくのか」。
不動産との関わり方について、より真剣に考える時代がもう訪れています。