税理士の澤田 美智です。
今回のテーマは「遺言書と相続分」です。
相続分には基本ルールがあります。
1.法定相続分
2.遺留分
法定相続分については、ご存知の方も多いと思いますが、
基本的には、配偶者が2分の1、子供はその残りの2分の1
を均等に分けた分が相続分となります。
子供が一人であれば、
配偶者 2分の1
子 供 2分の1
となります。
子供が二人であれば
配偶者 2分の1
子 供 4分の1ずつ
となります。
注意点として、生命保険金は、この法定相続分に含まれない、
ということです。
法定相続分は民法で決められているのですが、遺産分割協議
が必要な財産に限られます。
生命保険金については、契約であらかじめ受取人が定められ
ていますので、遺産分割協議の対象とはなりません。
これと同じ取り扱いになるものとして、法人から受け取る死
亡退職金があります。これは、被相続人が経営していた法人
から受け取ることが多いと思いますが、退職金の受取人が法
人の退職金規定で定められている場合には、その受取人の財
産となり、遺産分割協議の対象となりません。
では遺留分とは、何でしょうか?
法定相続分に対して、遺留分が民法で定められています。
これは、相続人が最低相続することができる限度を示したもの
です。
例えば、
遺言書に、「長男に財産のすべてを相続させる」と書かれてい
た場合に、他の兄弟に相続する権利が全くない、ということに
なれば、他の兄弟は納得できませんよね?
以前は、「家督相続」という制度があり、長男がすべての財産
を相続する、ということが当然の時代もありました。
しかし、現在は、基本的に兄弟姉妹はすべて平等に遺産を相続
する権利を持っています。その例外が、「遺言書」であり「遺
留分」です。
「遺言書」が書かれていた場合には、基本的にはその「遺言書」
通りに遺産が分割されることになります。
しかし、平等の原則反しますので、「遺留分」は認められていま
す。これは、法定相続分の2分の1です。
つまり、上記の場合であれば、法定相続分は長男と次男が2分の1
ずつですが、「遺言書」があった場合には、2分の1の2分の1、
つまり4分の1が遺留分として次男に認められている権利となりま
す。
ただし、これは何もしなくても認められている権利ではなく、
相続発生後1年以内に「遺留分の減殺請求」(いりゅうぶんのげん
さいせいきゅう)という手続きを執らなければなりません。
内容証明郵便等の文書を送るのが一般的です。
注意点としては、遺留分は子供・配偶者のみに認められており、
兄弟姉妹には遺留分はみとめられていません。つまり、子供も
配偶者もいない被相続人に場合には、「遺言書」があればその
通りに遺産が分割される、ということになります。
私自身の経験から、「遺言書」を作成することはいろんな意味で
効果的ですが、「遺留分」については事前に検討しておく必要が
あります。遺留分を侵害しない「遺言書」の作成をお勧めしてい
ます。
親の思いを伝えるのが「遺言書」です。
この子にはこの財産を残してやりたい、この子には財産をやりた
くない、など、親の思いも様々です。でも親の財産なのですから、
親には、誰にあげるのかを決定する権利があります。
でも権利だけではなく、親の思いを子に伝えることは親の義務だ
と思います。
もめない相続とするために、「遺言書」の作成にはいろんな配慮
が必要だと思っています。
税金のことやいろんなことがかかわってくる「遺言書」です。
「遺言書」の書き方によっては、相続税が多額になるケースも
今までの経験上、結構ありました。
多角的な視点によって作成する必要があります。
やはり専門家へのご相談が不可欠だと思います。
次回は、「賃貸アパートの空室が東京でも増えている!」です。