税理士の澤田美智です。

今回は、相続税についてのお話しです。

相続税についての改正があったことはみなさんご存知だと思います。

では、その影響はどの程度だったのでしょうか。

被相続人の人数と課税割合

平成28年12月15日、国税庁より、改正の影響を受ける平成27年度

の相続税申告がされてから初めての申告状況が発表されました。

予想通りの結果でした。

平成17年に亡くなられた人のうち、相続税の対象となった人の比率を示す

「課税割合」は8.0%でした。

これは、前年の4.4%よりも3.6%増加しています。

平成18年から平成26年までは、ほぼ平均して4.1%~4.4%といった

割合でした。申告をしなければならない相続人が約8割増加した計算になります。

平成27年に亡くなった「被相続人」の数は129 万人で、相続税を支払う義務がある

人はそのうち10万3千人でした。前年と比較して、亡くなった「被相続人」の数にあ

まり変動はなかったのですが、相続税を支払う義務がある人は、前年が5万6千人でし

たので、実に84%の増加となったのです。

課税価格と相続税額

相続税の課税は、相続人が被相続人から相続した財産に対して課税するのですが、

その課税の対象となる財産の課税価格の合計は14兆5,554億円でした。平成26年

度は11兆4,766億円でしたので、約3割弱の増加となりました。

被相続人一人当たりで計算しますと、1億4,126億円でした。平成26年度は2億

407億円でしたので、一人当たりの課税価格は3割程度下がったことになります。

では、実際に支払った相続税はどうだったのでしょうか?

相続税額の合計は1兆8,166億円でした。平成26年度は1兆3,908億円でしたので

約3割の増加となりました。

被相続人一人当たりで計算しますと、1,758万円でした。平成26年度は2,473万円

でしたので、こちらも3割程度下がりました。

つまり、富裕層だけでなく、準富裕層の方が相続税を支払わなければならなくなっ

たことで、課税価格や相続税額がそんなに多額でない人たちが相続税を納付するこ

とになった、ということになります。

もともとの課税対象を広げたい、という思惑が成功した、という訳です。

東京23区内に一戸建ての家を持たれていた場合、平成26年までであれば、相続税の

心配はなかったのですが、これからは心配しなければならない、ということです。

東京23区内の路線価は上昇していますので、家を持っているだけで、相続税がかか

ってしまうかもしれません。

早めに相続税のシミュレーションをしておく必要があります。亡くなってから慌てても

できることは限られます。

相続税がかかるのかかからないのか、それだけでも知っておくことにより、亡くなって

から慌てる、ということが無くなり、相続税がかからないように対策を講じることも

可能となります。

相続財産の金額の構成比

日本では不動産の価格が高いため、相続財産のうち不動産の割合が高い傾向があります。

しかし、この不動産の割合はやや減少しています。代わりに現金・預貯金の割合がやや

増えています。

準富裕層の方は、不動産よりも金融資産を所有する人が多い、ということが窺えます。

不動産+金融資産を所有されている方は、特に注意が必要です。不動産の評価額は思っ

ているより低いかもしれませんが、金融資産はほぼそのままの評価となります。また

生命保険なども非課税を超えた金額には課税されますので、注意が必要です。

今回は、現在の相続税の実態についてご説明いたしました。

次回は、「相続税は恐ろしい税金なのか」について検証したいと思います。

 
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