税理士の澤田美智です。

第3回 「青色専従者給与って?」

青色申告の特典は次の通りでした。

■青色申告の特典

①青色申告特別控除 10万円or65万円

②青色専従者給与の必要経費算入

③青色申告の損失の繰越

④現金主義による所得計算

⑤税額更正の制限

今回は「青色専従者給与の必要経費算入」についてです。

②青色専従者給与の必要経費算入

青色専従者給与の説明の前に、

実は、生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給与、地代、家賃等

は、必要経費にならないのです。


例えば、サラリーマンが賃貸マンションを購入して、管理や清掃、帳簿付けを奥さんに任せている、

といったケースがあると思います。また、親の土地を借りてアパートを建て、親に地代を支払う、

ということも考えられます。

こんな場合、奥さんに給与を支払いたいと思うのは当然ですし、親に支払った地代を経費にしたい、

と思うのも当然だと思います。

しかし、必要経費にはならないのです。

えっ?ダメなの?

そうなんです。ダメなんです。

でも、その不動産事業が事業的規模に該当すれば、税務署に届出をすることにより、

特別に必要経費として認めましょう、という制度が、「青色専従者給与」なのです。

ポイント1 専従者とは?

「専従者」となっていますので、パート収入があるような場合には、認められません。

また、専従者給与を1円でももらったら、所得税の扶養者の対象外となってしまいます。

つまり、103万円の基準は関係ない、ということです。支払ったらアウトです。

ただし、「専従者給与の届出」を提出しただけで、実際には支給しなかった場合には、扶養者として

認められます。あくまでも、実際に経費として配偶者に支払いをしたかどうか、ということで判断

されるんです。

ポイント2 健康保険の扶養から外れる?

所得税の扶養者の対象外となりますが、社会保険の扶養者から外れるわけではありません。

103万円基準と130万円基準というのをお聞きになったことがあると思いますが、

青色専従者の場合、103万円基準は関係なく支払ったらアウトですよね。

でも、社会保険(健康保険や厚生年金)の扶養者については、あくまでも130万円基準で

判定します。専従者給与が130万円未満であれば、社会保険の扶養者になれるんです。

ポイント3 支払はどうするの?

実際に払ったかどうか、が重要ですので、「専従者給与の届出」をして給与を支払ったことに

して必要経費に算入する、ということはできません。

必ず現金を渡してください。

振込をするのが一番証拠も残りますのでベストですが、現金での支給でも構いません。

ただし、現金の場合には、毎月月末に定額を出金する、等の工夫が必要です。

ポイント4 専従者給与の限度ってあるの?

専従者給与の限度額は、オーナーが決めます。特に限度額はありません。

限度額は、「専従者給与の届出書」に記載することになっています。

ただし、実際には何もしていないのに、給与を支払うことは認められていません。

あくまでも実際に仕事を手伝ってくれていることが条件です。

実際、お医者様が奥様に、専従者給与として1千万円支払っている、といったケースもあります。

奥様が看護師さんで、実際に事業を手伝っており、また経営にもタッチしていた、という事実が

あったようです。

ポイント5 配偶者が仕事をしていたら絶対給与を支給できないの?

配偶者が仕事をされている場合、専従者には該当しないので、専従者給与を支給することはできません。

ただし、「生計別親族」である、ということを条件に通常の給与を支給することができます。

この場合には、専従者給与ではないので、届出は必要ありません。

ところで「生計別親族」って、どういうことでしょうか?

「生計を一にしている」というのは、同居していれば、明らかに独立生活をしていない限り「生計を

一にしている」ことになります。

しかし、同居はしていてもそれぞれに所得があり、生計が別ということもありますよね。

例えば、夫婦がどちらもお医者様で、別々の病院に勤務している。

生活費は、それぞれの収入から出し合って生活している、といったようなケースです。

このようなケースの場合には、同居していても「生計別」と判断されます。

逆に、同居していないけれど、「生計を一にしている」というケースもあります。

例えば、仕事や学校の関係で別に住んでいるが、生活費を送金しているケースが該当します。

「生計別親族」に該当すれば、通常の給与を支払い、必要経費に算入することができる、というわけです。

この場合、法人が給与を支払うのと変わりませんので、未払での処理も認めてもらえます。

第4回は「青色申告の損失の繰越」についてです。

 
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