みなさん、こんにちは。
「現役大家FP」の佐野です。
2017年に入り、収益物件用のローン、いわゆる「アパートローン」を取り巻く状況が厳しくなってきています。各金融機関に金融庁のチェックが入ったという報道もあり、不動産投資家にとっては借りにくい状況が生まれつつあります。
今回のこうした一連の動きには、業界全体として膨らみすぎたアパートローンを牽制する目的があると言われています。なぜアパートローンは行政から目をつけられるほどヒートアップしてしまったのでしょうか。
その理由は大きく二つあります。
一つ目が、2015年1月に行われた「相続税の増税」です。相続税が免除となる基礎控除額が下げられる一方で、税率が引き上げられました。特に基礎控除の減額の影響は大きく、これにより都市部では相続税の課税対象となる人が2倍近くに増えたと言われています。
これに対し、相続税節税の古典的方法である「収益物件建設による土地評価額の引き下げ」が各地で活発になりました。所有している土地にアパートを建てることによって、更地や自用地(自宅が建っている土地)よりも資産評価額が下がるという手法です。この方法で相続税を圧縮しようとする地主さんが続出したのです。
アパートローンが膨張したもう一つの理由が、2016年1月に導入された「マイナス金利」です。それまでも長い間低金利が続いていましたが、日本経済にとって初めてとなるマイナス金利導入は消費者にとってもインパクトが大きく、住宅ローンを含めたローン市場が活性化したのです。
こうした変化を背景に伸び続けてきたアパートローン。それがなぜ今問題となっているのでしょうか?
金融庁が警戒しているのは、ズバリ「バブル崩壊」です。
アパートローンが伸びてきたということは、それだけ賃貸物件が増えてきたということでもあります。それはつまり「賃貸物件の競争の激化」を意味しています。
事実、日本全国で空室率は上昇の一途を辿っています。空室率の上昇は連鎖的に家賃下落率を加速させます。「予定通り入居者が入らない」「予定通りの家賃がとれない」となると最悪の自体として考えられるのが、住宅ローンの焦げ付きです。
この“アパートローンの不良債権化”こそが、金融庁が恐れる事態なのです。
次回は、こうした状況になった理由を消費者(アパートローンを借りた人)の立場からもう少し掘り下げてみたいと思います。