こんにちは!
「幸せと笑顔を最大に!」遺言・相続コンサルタント/行政書士の坂井宏爾です。
前回の記事で「節税養子判決」の概要はわかっていただけたと思いますが、さて、最高裁で争うほど実の子供たちがもめにもめた当事者の父親であるAさん。生前にできたことはなかったのでしょうか?
一つは、長男の口車に乗って節税のために孫を養子にしなければよかった。確かに一理あります。(節税のための養子もいろいろなことを考えたうえでやりましょう。)
もう一つは、揉めないための遺言を作っておくこと。(というよりも、節税養子の云々というよりも、遺言作成は、家族を争族にしないための必須事項です。)
※ただし、遺留分に関しては遺言でも対応できません。
では、相続争いで有名になった父親のAさんは、どんな遺言を作っておけばよかったのでしょうか?
長男Bと孫X:長女C:次女Dの受け取る相続財産が1:1:1になるような遺言の作成です。長女も次女も感情のもつれやいろいろ言い分があるとは思いますが、結局のところ、Bの息子Xと戸籍上、兄弟姉妹になったことに不満があって最高裁まで争ったわけではないでしょう。とどのつまり、もらえる相続財産が減らなければ裁判を続けることもできなかったはずです。どうやら、Aさんは長男のBと関係が悪化した後、Xとの離縁の手続きを行っていたそうですが、離縁の手続きに力を入れて時間をかける前にきちっとした相続コンサルタントに相談して遺言を作っておけばよかったのです。ちなみに、Aさんが遺言を作る場合の注意点としては、孫Xに相続させる財産の割合に注意すること。財産の割合に注意が必要というよりも、遺留分に注意が必要ということです。戸籍上は孫のXも正当な相続人の地位にありますから、遺留分の権利者です。この場合に孫のXの遺留分は、8分の1ですから、相続財産の8分の1以上が孫のXが相続するように遺言を作る必要があります。そうしないと、やはり長男側と長女、次女で揉めることになります。
また、長男との関係が悪化していたということで、長男側にできるだけ相続財産が行かないようにする場合も、長男のA、孫のXの遺留分には注意が必要です。
遺言の作成は、どんな場面でも家族を争族から守る一番有効な方法ではあるのですが、相続で遺言作成よりも大切なことがあるのです。
それは、自分の相続を争族にしないための家族(被相続人と相続人)とのコミュニケーションです。