以前、近所になかなか売れないマンションの部屋がありました。
それはもう狭いわ安普請だわ管理が悪いわという酷い部屋で……ということはまったくなく、全国的に有名な某ディベロッパーのマンションで、南向きの3LDK、最寄駅からは徒歩5分という立地の良さという好物件。
しかも前住人は数年住んだだけの築浅で、さらにキッチンと浴室・洗面所はリフォーム済み。リビングにオシャレなアクセントクロスまで施工されていて「なぜこれで売れないんだろう?」と不思議に思っていました。
ひょっとして呪われたワケあり物件?!
ということも疑ってみたのですが、それも違うみたい。
ワタシの疑問は、その部屋のオープンハウスで氷解しました。
参考:【中古マンション】オープンハウスには絶対行くべし! の理由
内装は良いし、低層階ながら日当たりもバッチリ。街中なので眺望はイマイチだけど(向かいのマンションしか見えない)道路を挟んでいるので圧迫感はない。
それがどうして売れないんだろうなあ……と洋室の窓を開けたときに理由がわかりました。
隣のマンションと密接していたのです。
窓を開けたら隣のマンションの壁や窓とコンニチハ状態で、圧迫感しかないということやプライバシーがない、ということではありません。
隣のマンションのエントランス部分にある塀の上端がその部屋の窓の目の前にあったのです。
隣のマンションは70年代頃に建てられたヴィンテージマンション。
塀は緩やかなアールを描いて、建物へ入る人や車を自然な雰囲気で誘うようなデザインになっています。
ところが、当時は防犯意識が今ほどなかったせいなのか、あるいは建築家のこだわりの結果なのか、その緩いアールを描く塀には忍び返しも何もついていませんでした。
「これなら超絶どんくさいワタシでも、この塀に乗って登れば3階くらいへは余裕で行けるわ」と思わせるような仕様だったのです。
んで、その塀の行き着く先が、件のなかなか売れないマンションの窓の前、という事情だったわけですね。
不動産屋さんに訊くと、乗り気で見に来たお客さんも窓を開けると「あー……」となって成約には至らないそうです。
そりゃいくら立地も内装もいい部屋でも、侵入され放題の部屋は買いたくないよなあ。
不動産は現物を見ずには買えないとつくづく思い知った出来事でした。