居住中のマンションの内見に行くのはイヤ、空き家になっている物件だけ見る、という人がいます。
なぜかというと、家主に気を遣ってあれこれ見ることができないから。
ホントは下駄箱の中もチェックしたいけど、中がぐちゃぐちゃだと開けたら申し訳ないからな……なんてことを考えてしまって「見たい」と言えない。でも収納内部をチェックせずに買うわけにはいかない。
それなら最初から気兼ねなくチェックできる退去済み物件だけを狙おうということです。
ワタシはこれは非常にもったいないことだと思います。
というのも、がらんどうの部屋は生活シーンを上手く想起できないから。
3シートのソファを置くと、リビングの壁をどれだけ埋めてしまうか。
ダブルベッドを置くと、洋室のみっちり度合いはどれくらいになるのか。
必要な調理用具をすべて収めると吊戸棚内部はどうなるのかとか、ウォークインクローゼットに80センチのスーツケースと掃除機両方をしまえるのかとか、何もない空間でそういう想像をするのは案外難しいものです。
新築マンションのモデルルームでも、がらんどうにはしてありません。
ただし、すンごく非現実的な生活シーンの演出がされているので、これまた実際に暮らす想像はしづらい。
普通は冷蔵庫置き場に観葉植物は置かないし、クローゼットの中にシャツが3枚掛かっているだけとかありえないし、モデルルームにある家具家電雑貨はあまり参考になりません。
しかし、居住中の部屋なら生身の人間の生活そのものなので、すごく参考になります。
売主が自分と似たようなライフスタイルで、家具の好みが近かったりすると余計に便利。
「収納の扉を開けられるのはイヤじゃないのかな」と気に病む必要はありません。
売主も「売るからには訊かれたことには全部答えよう!」と意気込んでいます。
下駄箱の中次第で買うかどうかが決まるとなれば、快く見せてくれるはずです。
実際にワタシが居住中の部屋を内見者に見せていたときは、クローゼットやキッチンの抽斗を開けない人が来ると「全部見なくて大丈夫?!」と心配になりました。
家具を置いた雰囲気や収納の様子をチェックできる以外にも、居住中の部屋を内見するメリットがあります。
やはり実際にその部屋に住んでいる家主にいろいろ質問ができるというのは、とても大きい。
もちろん、どんな質問でも仲介業者経由でできますが、顔を合わせて話せる方が心強いです。
「ご近所はどんな雰囲気ですか?」と訊ねたとき、満面の笑みで「良好ですよ」と答えられるのと苦笑いしながら「良好ですよ」と言われるのとではだいぶ違いますもんね。
トラブルやデメリットを家主から上手に引き出すことができればしめたもの。
悪い点がわかっていれば買うか買わないかの判断はサッとできるものです。あれこれ悩むより直接質問した方がスッキリすると思いますよ。
ただし、内見時に価格交渉はしないでくださいね。
短時間でデリケートな点にズケズケ切り込むのは得策ではありません。
内見はあくまでも部屋の中を見る機会と割り切ってください。