以前、自宅の近所を散歩していたときに、カンジのいい老夫婦とすれ違いました。
「あー、仲良さそうなご夫婦でステキだな~」と見るともなしに通り過ぎると、ご夫婦から「ちょっとお訊ねしたいのですが」と声を掛けられました。
何事かと思って話を聞くと「この辺りに住んでいらっしゃいますか?」と仰るので、ははぁこれは道を尋ねられるのかなと早合点したところ、違いました。
なんでも、ご主人がリタイアされたのを機にこのエリアに移住したいと考えているので、住み心地を教えてほしいとのこと。
自分が住んでいる街に暮らしてみたいと言われると嬉しくなるのって、アレはなぜなんでしょうね。
病院は近いがスーパーは少し遠いだの、治安はいいが保育園が近いので平日昼間は喧しいだの、べらべらと喋ってしまいました。
もし空いている土地があれば教えてほしいとまで言われましたが、さすがにそこまではワタシも把握していません。
地元に強い不動産屋を伝えて、ご夫婦と別れました。
良い立地とは何か
一般的に不動産の「良い立地」とは、ターミナル駅まで直結で10分! 大型ショッピングセンターへ自転車で5分! など、様々な施設からの距離で語られることが多いです。
これは、交通の利便性が良い立地の方が不動産価値が高いからです。
しかし、件の老夫婦の立場で見ると、駅までの近さが必ずしも好立地というわけではなさそう。
もう通勤時間の長さを気にする必要はないのですから、こういった人達にとってはアクセスの良さよりも自然環境に恵まれているかとかバリアフリーの歩道が整備されているとか重視すべき観点がほかにあるかもしれません。
駅や商業施設からの距離は地図で簡単に確認できますし、不動産屋に問い合わせればいくらでも教えてもらえます。
しかし、「歩いていて楽しい街並みか」「近所にどんな人が住んでいるか」なんてことは、自分の目で確かめたいものです。
なので老夫婦が街を確認するために実際に歩き、住民にインタビューまでしていたのは、けだし正しい行為なのでしょう。
もっとも、こんな手段を取れたのは彼らが好印象のご夫婦だからであって、人によっては単なる不審人物になってしまう可能性も無きにしも非ず……。