訳あり物件専門家 白石 麗花です。<
いつまでも家を建てることができない土地、ありますよね。
建築基準法上、2メートル以上道路に接していない土地は、原則建物は立てられないわけですが、そういう土地を、袋地とか、無道路地とか、囲ぎょう地(本来の囲ぎょう地の意味は袋地の周りの土地を意味します)とよびます。
私が売却の依頼を受けたその土地も、道路に1.5mしか接していないため、家が建たない土地でした。土地の入り口が隣の土地の持ち主が所有している50センチの正方形の土地があるため、接道義務を単独で満たしていなかったのです。
今まで多くの不動産業者が、その50センチ四方の土地の持ち主に対し売却の依頼を試みてきたものの、けんもほろろで応じてもらえない、そんな状況でした。
当然、依頼を受けた土地は今のままでは建物を建てることができないわけですから、まともな値はつきません。現地を見に行った際に、ダメもとでお隣の50センチ四方の土地の持ち主さんにあいさつに行ってみました。
その方は高齢のおばあちゃんでした。私の言葉も聞こえているのかいないのかわからない。何を話しても全く反応がない・・・そんな感じでした。
やっぱり、このまま家が建たない土地として売るしかないのかな、そう思いながらあらためてその家が建たない土地をながめていたところ、敷地の中に建物の基礎だったと思われる残骸がかすかに残っていることに気づきました。
この土地は、以前に建物があったのかもしれない・・・現状の登記簿謄本では確認できないものの、閉鎖謄本、滅失謄本を取り寄せたところ、やはり何十年も前には建物があったことが分かりました。その建物の所有者の名前は姓が隣のおばあちゃんと一緒だったのです。
私は翌日、もう一度現地を訪れ、その土地に立って、その土地の思いを感じるべく目をとじました。なぜその土地は、昔は家が建っていたのに今は家が建たない土地になってしまったのか。土地そのものが建物を建てなくないのか、ほんとは建ててほしいのか・・・
私が感じ取れた土地の思いが正しいのかどうかわからないまま、お隣のおばあちゃんにまた会いに行きました。おばあちゃんに、「むかし、お父さまかお母さまが住んでいらしたのですか、おばあちゃん、何があったのか、どうなさりたいのか、私に教えてくださいませんか」と耳元でそっと尋ねてみたのです。すると・・・おばあちゃんは、私の顔を微笑みながらしっかりと見て、「売ってあげるよ」とうなずいたのです。
詳しい事情は何も話してくれませんでしたが、おばあちゃんは50センチ四方の土地を売ってくれることになり、その結果、土地は家が建たない土地から、家が建てられる土地に生まれ変わりました。
不動産にはその土地自身の思いがあると私は考えています。こんなことを言うと、みんな「なにをいってるんだ?」といった顔をされることが多々あります。でも、売買がうまく進まない、いつも障害が起きて話が壊れてしまう、そんな不動産ってありますよね。そういう時は、私は、その土地なりその建物の思いを読み取ろうとしてみるのです。
いつも何かがわかるというわけではありません。でも不動産自身の思いが感じられた時、その思いに従ってみる、その思いによっては、これ以上関わるのをやめる、そんなこともあります。
私の勝手な想像ですが、おばあちゃんはきっとお母さまかお父さまが住んでいた家が建っていた土地に何か思い入れがあり、家を建たせたくなかったのかなと、土地を見ていて感じたのです。
不動産に関わるものとして、そんなことを気にしながら、家を売る。こんなことを考える不動産屋は私くらいかもしれませんね。
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