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ボルテックス 人事統括部 人事部長 金井 勇一氏 撮影=リビンマガジンBiz編集部
インセンティブ制度を廃止、本当の伸びていく仕組みを作る
―なぜ社員への「無関心」が大きくなっていたのでしょうか。
2017年の4月から、当社はインセンティブ制度(成果給)を完全に廃止しました。
代表の宮沢が、これまでのインセンティブしか目的がない営業社員の姿勢を見直したのです。周りを支え、ともに成長を促す営業社員の育成には、人間として成長できる環境の基盤が必要です。持続的に伸びていく組織・仕組み作りを始めました。
これは非常に素晴らしいことで、会社としての健全化にも大きく貢献します。しかし反動も大きかった。インセンティブ制度の廃止が引き金になり、30代の中堅社員が40人近く退職しました。
人が少なくなり、現場が疲弊しているなかに、フレッシュな新卒が入社した。当時はOJTもままならない状況が生まれ、「無関心」が生まれたのではないかと推測しています。結果的に2017年の新入社員は、27名のうち21名が退職になりました。私より3カ月早く入社した方たちです。そんな惨状でした。
―2018年の新入社員はどうですか。
2018年は20名入社し、現在も全員残っています。
メンター以外にも、教育制度をかなり拡充しました。正直「これはやり過ぎだろう」と言われるほどに拡充しました。
まずは、教育や関心を持つということが、従業員にとってリテンション(人材維持)にどれほど働くかを意識しました。エンゲージメント(つながりの強さ)に効果があるのかを推し量りたかったのです。
かなり無理を言って、新卒社員は、入社7カ月間は人事部で預かりたいと提案しました。すると宮沢からは、かなり寛大に「やってみろ」と言っていただきました。挑戦に寛容なのは、当社の非常に良い風土です。
すぐに新入社員を地方に配属させてしまうと、2017年の二の舞になってします。11月から営業教育部が預かり、本社で研修を継続するというかたちで続けています。
―他にも取り組みはあるのでしょうか。
もう1つの大きな問題が、社内の規定が形骸化していることでした。
就業規則をはじめとして、様々な規定は整備されていたのですが、本来であれば労働規則監督署に届け出なければならない事項なのに、稟議書で行われていて、それが支給されていることが分かりました。
就業規則にない手当の支給や、福利厚生が存在していました。これらも改革しなければならないと感じました。
そこで、2018年1月に人事制度委員会を立ち上げました。
ここで決まったことは、たとえ役職者が異を唱えたとしても「すでに決定していること」です。人事制度委員会以外のことは受け付けませんということを植え付けようと思ったのです。
当社は、「ルールがないものは自由にやってよい」「ルールがあったとしても稟議で変えられる」という文化がありました。その間違った文化を、法律や法令、規則の範囲の中で稟議を交わすというやり方に変えました。
ルールを作って、どの部署・役職者であっても平等な環境を作りました。
―営業社員の現場からすると評判は良くないのではないでしょうか。
そうですね。
多分、「あの人事部長は…」と今でも言われていると思います。
ただ、私は確固たる決意を持ってボルテックスに入社しています。
現場の社員に個別に嫌われたとしても、結果的に全従業員が「会社全体が良くなった」「風土が変わった」と思ってくれれば、それでいい。そこに私が関与したかどうかは関係なく、皆さんにそう感じていただく環境を作り上げたいのです。そのために、この1年邁進している次第です。
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